新・ことば事情 3730
「宅八郎評論家」
2009年10月23日夕方、「ミヤネ屋」のスタッフのY君が、
「道浦さん、道浦さん、いま、TBSで・・・」
とテレビ画面を指し示すではないですか!一体何が起こったのか?と思ってテレビを見ると、そこには、自分のブログ上で音楽評論家を「ブッ殺す」などと脅したとして、オタク評論家の宅八郎容疑者が書類送検されたというニュースで、TBSのサイドスーパーは、
「宅八郎評論家」
つまり「容疑者」呼称を避けて、肩書として、
「評論家」
を使っていたのです!Y君いわく、
「いやあ、珍しいなあと思って。『稲垣メンバー』みたいですね」
とのこと。私に知らせるというところが、なかなか、わかっていますね。TBSはその後の午後7時台のニュースでは、アナウンサーが、
「宅評論家は・・・」
のように読んでいました。字幕だけでなく音声でも「評論家」を肩書として使っていました。ちなみに午後6時代の関西テレビのローカルニュースでは、
「宅容疑者」
でした。「容疑者」でいいのにそれを避けるのは、それだけ「容疑者呼称」に手垢がついているということでしょうね。推定無罪だから、呼び捨てをやめて「容疑者」を付けるようになったのに。
「書類送検」という処分では、一般人なら「匿名」で名前が出ないところですが、宅さんぐらいの有名人になると話題になり名前も出ますが、「容疑者」とするほどでもない。そういった判断の時などに「容疑者呼称」の代わりに、普通なら「社長」「部長」「課長」などの「肩書」をつけますが、それがない、いわゆる「自由業」の人の場合には、何と読んでいいのかが難しく、これまでも、
「稲垣メンバー」
のような例はよくあります。よくあるといっても「容疑者」よりは少ないので、目立つわけですね。
そういった例に関しては、皆さん「平成ことば事情426稲垣メンバー」や「1960紳助所属タレント」「2083小泉今日子の肩書」もお読み下さい。
(2009、10、23)