新・ことば事情 3728
「泡のようなもの」
押尾学被告の初公判を控えた10月23日正午前、日本テレビ「思いっきりDON」での、これまでの事件の流れを紹介するVTRの中で、
「死亡した女性は、2錠目のMDMAを飲んだら、泡のようなものを噴いて倒れた」
という文章が出てきました。この、
「泡のようなもの」
がひっかかりました。「泡のようなもの」って何なんでしょうか?泡ではない、何か?噴いたものの成分はもちろん分かりませんが、「形状」は見ていたのですから、わかるはずです。ですからこれは、
「泡を噴いて倒れた」
でいいのではないでしょうか?
「泡のように見えて、実は気泡の大きさが"泡の基準"に満たないので、厳密に言うと、あれは泡ではなかった」
とかなんとかいうなら 話は別ですが、そんなことはないと思います。よくニュースで、
「バールのような物でこじあけられ」
なんてのが出てきますが、この場合の
「バールのような物」
は、こじ開けた形跡から判断して「バールのような形状のものではないか?」と推測した上での表現ですから良いのですが、この「泡のようなもの」はそういうわけでもありません。うっかりすると聞き逃しますが、明らかにおかしな表現ですね。
しかし、その後の「ミヤネ屋」でも同じ表現が出てきたのです。字幕スーパーも。そうすると、供述がそのような表現だったのかもしれない。もしかしたら、白っぽい吐瀉物(としゃぶつ)の中に細かい泡が混じっているようなものだったのかも。確かに「泡を噴く」というと、シャボン玉大の泡を噴いているようなイメージがあるから、そうではないということを言いたかったのかもしれません。そこで原稿のまま、
「泡のようなもの」
で読みました。
(2009、10、23)
(追記)
ああ、それなのに、押尾被告の判決公判を伝えた11月2日の「ミヤネ屋」のパネルでは、
「泡を吹いて」
になっているではありませんか!やっぱり「泡」でよかったんだ!
(2009、11、2)