新・ことば事情 3731
以前、もう3年ほど前になりますが、NNN系列(日本テレビ系列)の研修会に講師として出席したときに、系列局の若手アナウンサーからこんな質問が出ました。
「新聞ラジオ・テレビ欄は、午後11時のあとは『深夜・明朝』と書かれていますが、『深夜』という表現は何時から何時まで使えるのでしょうか?きょうと明日の境界線は?」
これに関して、たとえばビデオリサーチ社の「視聴率表」は、前日の番組の数字が印刷されていて、その日の午前9時に、インターネット上に掲示され、印刷されたものも午前10時には会社に届きます。そこには、
『昨日の29時(=午前5時)』
までの番組の視聴率が記されています。午前9時の段階では、
『たった4時間前まで』
の番組の視聴率が記されているわけです。つまり『午前5時』を境に、『昨日と今日』、『今日と明日』の境界線が引かれているというわけです。
ということで、2006年12月9日放送予定の『声~あなたとよみうりテレビ』は、「第8回子ども番組審議会」の様子も含めて15分拡大版で放送したために、放送開始時刻は、
「午前4時59分」
で、番組終了は、
「午前5時29分」
テレビの視聴率表上は「足掛け2日」の30分番組になりました。
<ここまで2006年12月6日に書きました。当時のナンバーリングでは、UPしてないけど「平成ことば事情2306」>
その後、2007年9月の新聞用語懇談会放送分科会で出た質問は、
*「深夜」の使い方について、NHKでも最近「今日深夜0時30分放送」というスーパーとアナウンスの両方があった。各社「午前0時30分(24時30分)」に放送する番組の表現はどうしているか?
というものがあり、各社の対応は、
→(NHK)規則はない。「日付が変わって、25日午前0時」「このあと午前0時」「25日午前○時○分」
(日本テレビ)問い合わせがあるものに関しては「○日午前○時○分」。直近も「日付けや曜日」を使う。「深夜」は使わない。
(TBS)24時制は使わずに、午前・午後で分ける(12時制)。「このあと、あしたの・・・」という言い方はせず、「このあと○時間後の午前○時から」というようにしている。「深夜」は使っていない。
(フジテレビ)編成は30時制(29時59分59秒まで)になっている。「深夜」は使わず「あす未明」にする。
(テレビ朝日)その場で誤解のないように、わかりやすくやっている。「深夜」「翌○日」も使っている。「25時」のような表記はしない。
(テレビ東京)午前3時過ぎの「深夜映画」の予告で「水曜深夜3時」(=「木曜午前3時」の場合)という表記や、午後7時現在で「今夜1時」(=翌日の午前1時)という表現も使っている・・・。
(毎日放送)TBSに準拠。「このあと午前○時から」など。
(朝日放送)その場その場、現場まかせ。しかしテレビ東京の「今夜1時」はわかりやすいと思う。
(関西テレビ)「今夜0時○分」と使う。「きょう深夜」も使っている。
(読売テレビ)参考だが『ドキュメント'07』(日曜24時台OA)の告知ハガキでは「今夜24時30分から(ビデオを録る方は、月曜午前○時○分)」と書いている。
(テレビ大阪)「深夜」は番宣で出てくる。「きょう深夜午前0時○分」という具合に。新聞のラ・テ欄の縦の帯に「深夜」と書いてあるので、それにあわせて編成が判断しているのではないか。
(共同通信)原則「きょう~」「きのう~」。「日本時間の今夜遅く」というような表現はある。新聞では、午前0時をすぎると全部「きょう未明」。
というような意見が出ました。
それから更に1年半が経ち、「情報ライブミヤネ屋」のスタッフN君から、
「3月1日(日)の24時55分から、『ドキュメント'09』で大相撲の床山・床寿さんの特集『最後の大銀杏』を放送するんですが、その時間の表記・読みはどうしましょう?」
と質問されました。
過去のこういった経緯を説明した上で、字幕スーパーは、
「3月1日(日)深夜24:55 ~25:25放送」
としました。ナレーションもそれに従って、
「深夜24時55分」
としました。分かりやすさを第一に考えた結果です。こういった番組PRの場合は、ニュースでの表記とは、またちょっと基準が違いますね。
(2009、2、27)
(追記)
映画化されて話題の小説『風が強く吹いている』(三浦しをん、新潮文庫:2009、7、1)を読んでいたら、アフリカからの留学生ムサの発言として以下のような言葉が。
「『「月曜深夜」に放送!お楽しみに!』と言っておきながら、日付的には火曜日の午前一時に放映する。神童さん、これは変ではないですか?」(103ページ)
これは、「深夜」という表現に対する著者の疑問を、登場人物が語っているのですね。
(2009、10、27)