新・読書日記 2009_140
『輿論(よろん)と世論(せろん)~日本的民意の系譜学』(佐藤卓己、新潮社:2008、9、25発行・2009、3、5第3刷)
去年、この本が出た時から関心を持って「読みたいな」と思っていたが、いざ手に入れてからも、なかなか読み進めない。一般書というよりは専門書・論文に近い文体が、電車の中で立ったまま読み進むことを困難にさせている。だからと言って、電車で座って読んでいると眠くなってしまう...。これまで書いてきた関連の論文を寄せ集めたようで、ちょっと冗漫な感じがする。もっと、すっきりとまとめたほうが読みやすく訴求力があると思うのだが。
肝は、戦後の当用漢字で「輿論(よろん)」の「輿」の字が、表外字になってしまい、当て字として「世論」を使い始めたことで、それまで「輿論(よろん)=オピニオンリーダーの意見」「世論(せろん)=世間一般大衆の意見」ときっちりと分けられていたものが、世間一般大衆の意見がオピニオンリーダーの意見なのだと、混同されるようになり、「世論調査」の動向が政治の行方を決めてしまうよいうな「ポピュリズム」に陥ってしまったのだというが...。目の着け所はおもしろいが、一つ疑問が。では漢字を使用しない、もちろん「当用漢字」も「常用漢字」も「表外字」もないアメリカでは、そのようなポピュリズムは起こらなかったと言えるのか?ブッシュの戦争と小泉ポピュリズムは、同根のものではないのか?つまり漢字とは関係なく「時代の趨勢」というのは動いてきたのではないか?「輿論」→「世論」が原因というのは日本に特有の出来事なのか?(そうだろうけど)
ちょっと疑問が残った。
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