新・読書日記 2009_84
『地団駄は島根で踏め ~行って・見て・触れる《語源の旅》』 (わぐりたかし、光文社新書: 2009、3、20第1刷)
急がば回れ、ごたごた、うやむや、ごり押し、あこぎ、ひとり相撲、相槌など、数々のことばの語源となった現地に行き、そのことばの生まれた背景を取材して、ついでにその土地の名物をあじわう、名付けて「語源ハンター」!いいなあ、私もこういう仕事をやってみたい...という、大変興味深い本。楽しかったよ!
『地団駄は島根で踏め ~行って・見て・触れる《語源の旅》』 (わぐりたかし、光文社新書: 2009、3、20第1刷)
急がば回れ、ごたごた、うやむや、ごり押し、あこぎ、ひとり相撲、相槌など、数々のことばの語源となった現地に行き、そのことばの生まれた背景を取材して、ついでにその土地の名物をあじわう、名付けて「語源ハンター」!いいなあ、私もこういう仕事をやってみたい...という、大変興味深い本。楽しかったよ!
『多読術』 (松岡正剛、ちくまプリマー新書:2009、4、10初版1刷・2009、4、20初版第2刷)
正剛というと、サッカー日本代表のGK楢崎を思い浮べてしまうが、「松岡」正剛の本も買ったことはあったが、まだちゃんと読んでいない。タイトルに引かれて買った。一気に読んだ。納得。ちくまの編集員が聞き役になって松岡氏の話を引き出している。
人類が黙読できるようになったのは14世紀か16世紀以降で、それまではほとんど音読だったとか、本は「リスク・リスペクト・リコメンデーション」の「3R」だとか、いい本に巡り合う打率は、最高でも3割5分だとか、本を読んで自分で年表を作るとか、「読書は編集である」とか、いろいろな含蓄が記されています。でもこれ、プリマー用の本じゃないでしょ、あきらかに。プリマー新書なのに、もっと上級者向けの気がします。
『未曾有(ミゾーユ)だよプロ野球』 (いしいひさいち、双葉文庫:2009、4、19)
いしいひさいちのおもしろさの原点に近い、野球人のキャラクターが出てくる。もう20年以上前の作品。ドラフトで因縁があった当時のKK・桑田と清原が共に引退したものの、今だに脚光を浴び、バカ・アホキャラで描いていた原・岡田がともに自らのチームの監督になる日を、誰が想像したか?根暗キャラの王監督と、アホキャラの原監督が、ともにWBCで監督を務めて、日本代表チームを世界一に導くなど、読めば読むほど、時の流れを感じる。現在とつながっているからだ。そういえば、広岡さん、土橋さんはお元気だろうか?
行本は2004年3月に「ぴあ」から出てる。とってもおもしろかった。いろいろ気になる表現や記述があったので、ピックアップしました。
・古チン(46ページ、70ページ、101ページ)。やっぱり苗字に「古」と付く人は、そんなあだ名で呼ばれるんだ!
・言い間違い=「あそぶはんびんな人間」(55ページ)「赤影、とんじょう!」(登場と参上が混ざった)。「生まれてこの方、見たことがない」と言おうとして「生まれてこの方、寝たことない」。「あそこに立ってるのがうちの主人です」と言おうとして、「あそこが立っているのがうちの主人です」と言った(56ページ)。
「小学校の時に大好きだった女の子(もしくは男の子)に大学生くらいで出会って、そのあまりの変わり様にゲボがでそうになったことってありませんか?
・ 飲み代(しろ)(124ページ)
・「ビーフクレイジー」の批判精神は特筆。
・「ありがたいなあ」(175ページ)の渡辺篤史、さすが。
・「ハゲって言葉はすごいね。悪口としては、かなりの威力を持っている。80%の人に効くはずだ。デブとかバカより効くわけだ。ハゲ。」(179ページ)。
・「『カフェ』ってなんだ。『キッサテン』じゃダメなのか?」(194~197ページ)。「デニム」と「ジーンズ」「Gパン」についても書いている。その通り!
・ 巻末の八嶋智人との対談も楽しい。満点です!!
『昭和の名人決定版7・ 三代目 三遊亭金馬(壱)』 (小学館:2009、4、28)
CDと15ページほどのパンフレットです。「三遊亭金馬」、初めてその喋りを耳にしました。
*「居酒屋」昭和36年4月28日収録。66歳。
昭和4年にレコード盤を出し大ヒットで金馬のヒット作、生涯の十八番だと。いい声、テンポもいい。さすが十八番。こぶしが聞いてる。客の笑い声が若い。建て替え前の東京宝塚劇場の写真を見て、「いつも前を通ってるけど、あそこだったか」と、感慨が。
「入り口(いりくち)」と濁らず。「まっちろ(真っ白)な指」よ、江戸っ子だね!「『ベースボールの手袋』のような手」=「グラブ(グローブ)」のことですな。時代ですね。
「酸っぱい」・・・甘口とか辛口とかは聞いたことはあるが、「スパ口」てぇのは初めて。~私も初めて聞きました。
それにしても枕が長い!声色が楽しい。「アンコウのようなものがございます」「その『ようなもの』てえーのを」は、クレーマーですな、こうなると。
「たこの足は八本(はちほん)」「はっぽん」ではなく。「『えぼ(イボ)』はいくつだ?」
居酒屋で酔っ払いが店員をからかう話で、おもしろかったです。
*「孝行糖」昭和33年5月25日収録。63歳。
「売り声」が見事。対比がおもしろくて、資料としても価値あり。
「世の中は澄むと濁るで大違い、刷毛に毛があり、ハゲに毛がなし」
は、こんなところに出てくるのか。
「無になる(ム/ニナ\ル)」
のアクセントが、「おや!?」と思った。
「世の中に生まれた人で、使えない人はないといいます」
いい話ですねえ。
*「藪入り」昭和36年1月11日、66歳。声の伸びがいい。ややダミ声が、最初のしゃべり出しに聞こえるが、そのあとは聞き取りやすいいい声。正に「咄家」という感じ。枕が長い。前振りが長い。
『極北クレイマー』 (海堂 尊、朝日新聞出版:2009、4、30)
この小説は『週刊朝日』で連載されていたそうだ。ふだん『週刊朝日』はあまり読まないのだが、去年、1度だけ買ったときにこの小説を読んだ記憶がある。後半の一部分、デジャブのように感じたのは、そのためか。
これまでの海堂作品の登場人物が、チラチラと登場するのがワクワクする。それにしても著者は、ふだんの医師としての仕事の中での、大きな不満(個人的な小さな不満ではなく、国全体のシステムに対する不満)を、小説という形を借りることによって吐き出しているのだなと、つくづく感じる。それでいて、エンターテイメントとしておもしろく読ませるのはすごいなと思う。
『ふふふ』 (井上ひさし、講談社: 2005、12、1第1刷・2005、12、26第2刷)
考え方の基本は私も似ているように思うので、共感できる部分も多い。いろいろ勉強になった。刊行から3年あまりということだが、古さは感じられない。
『たった1%の賃下げが99%を幸せにする』 (城 繁幸、東洋経済新報社:2009、3、22)
著者はベストセラー『若者はなぜ3年で辞めるのか』の著者でもあるコンサルタント。その分析によると、
「『昭和の時代の賃金体系』(つまり時代遅れ)が『年功序列』で、これはもう90年代に行き詰まったが、そのまま下方硬直性を保ったままできている。そもそも『年功序列』も1960~70年代に完成したものに過ぎず、それほど歴史があるものではない。時代に応じた賃金の仕組みを作って行かなければならない。とりあえず職能給と職務給を組み合わせた形か。あと、人事部の人事権をひっぱがす。正社員と非正規社員の給与格差是正も必要」
と説いていました。シンプルな装丁は、好感を持ちました。
『日本人の知らない日本語』 (蛇蔵&海野凪子、メディアファクトリー: 2009、2、20初版第1刷・ 2009、4、10第3刷)
いやあ、おもしろい!著者は、外国人に日本語を教える「日本語学校」の先生。外国人の素朴な疑問って、けっこう核心を突いてることが多いですよね。それを、癒やし系の漫画でおもしろおかしくまとめたのが本書。海野さんにはぜひ、米原万里さんのようになってほしい。
『使えるヤクザ語実戦会話術 ~ビジネスに生かせるウラ社会業務用語』 (向谷匡史、情報センター出版局: 2005、10、5)
タイトルのように、実生活・ビジネスに本当に生かせるかというと、無理でしょう。うちの会社の後輩でこの本のとおりしゃべるヤツがいて、時々、何言ってるのかわからなくて、適当に相づち打ったこともありますが、この本を読んだので、これからはきっちりと相づちがうてます!
『昭和の名人決定版・ 五代目柳家小さん・二』 (小学館CDつきマガジン:2009、4、14)
「長屋の花見」=昭和36年、46歳のとき。油が乗っていて、晩年より相当テンポ早い。大家さんが、花見の料理や酒に関して「あたしが心配したから」という「心配」は、現代ではあまり使われることのない意味。つまり、「準備・用意」という意味でした。
「粗忽長屋」=昭和59年、69歳。テンポ遅い。ゆったりとした語り口。23年の時の差を感じる。それにしても「ビアホール寄席」って当時は「銀座ライオン」で落語の高座を収録してたんですね!
「ろくろ首」=昭和31年。41歳なのに、味は70代と変わらない、間のとり方。懐かしい感じがある。でもたまたま聴いていた時に疲れていたので、聴きながら眠ってしまいました。その後、もう一度聞き直したら、「ネタ」そのものがあまりおもしろくない。オチもダジャレだし。これまで聞いた中では、やはり小さんは「時そば」がおもしろいと感じました。
『平成落語論~12人の笑える男』 (瀧口雅仁、講談社現代新書: 2009、2、20)
12人の落語家のうち、「知っている」と言えるのは半分ぐらいだった。ということは、その「知らない」方の落語家をこれから知るチャンスがある、と前向きに考えて。
201ページに、『近年「落語ブーム」だ「落語黄金期」だと騒がれているが、一般社会からすれば、その実はたいへんおとなしい動きである。「静かなブームと言われていますが、"静か"ということはブームではないじゃないか!」と、落語家が自虐的にギャグにしているくらいだ。』 とあったのは、「静かなブーム」という言葉に関する私の感覚に合致した。
哀しくもいとおしい大人のラブストーリー。こういうの読むと、「セカチュー」みたいなのはホントに子供っぽく見えるね。
子供は読まないでください。R18、いや20指定だ。タイトルの「ばかもの」という言葉が、最初と最後にきっちりと設計され配置されている。栃木弁が生き生きとしているところなども、著者の独自性が表れている。小説家ってすごい!と思う作品。
『なぜグリーン車にはハゲが多いのか』 (佐藤明男、幻冬舎、2009、1、30)
衝撃的なタイトルだが、その答えは単純、あっさりと記されています。それほどの不思議はない。それより、カツラメーカーがどのように業績を伸ばしてきたかなどについて書かれた後半の方がおもしろい。また、日本と外国との意識の差なども「なるほどな」と思いました。前半部分は、「ほんまかいな」という感じがぬぐいきれません、はっきり言って。
『なんとなくな日々』 (川上弘美、新潮文庫:2009、3、1)
「なんとなくな」の「な」が詩的。癒やしの一冊。一つ一つ、3ページぐらいのほんとに短いなにげないエッセイなのだが、星新一のショートショート的な広がりを持つものもあるし、ほんとに何気なく、何も起こらない話もあるが、あとに、なにがしかの、ほっとする温かさが、手のぬくもりが残るような気がしました。とっても私小説的エッセイ。しかしこれが私小説、つまり「私生活」とすると、あの『センセイの鞄』も、フィクションではなくノンフィクションではないかと思ってしまうぐらい、通奏低音は同じ響きである。子供が二人もいて、夕食の買い物の途中にふらふらと立ち飲み屋に入って、焼き鳥二本と生ビールを飲むなんて、そんな人、普通はいません。十分、変わってます。
「ほっと」とか「ふらふら」という擬態語を、「カタカナ」ではなく「ひらがな」で書きたくなるんですね、川上弘美の世界では。
『罪と罰の事典 ~「裁判員時代の法律ガイド」』 (長嶺超輝著、落合洋司監修、 小学館: 2009、2、25)
これも「読書」するような本ではない。「事典」と書いてあるし、ページ数も400ページ近いし。しかし、もう来月から始まる「裁判員制度」を前に、万が一の場合に役に立つ本、また自分が裁判員にならなくても、もしもに備えて手元に置いておくと良い本。
21章までに分けられた具体的な罪は、その罪を犯したときの「罰」がどのくらいであるのかを、ひと目で分かるように工夫してある。
「そもそも『罪』と『罰』ってなんですか」
という最初のページは「そうそう」と思って読んでしまう。 著者は「裁判の傍聴」の「プロ」で、私もその様子を書いた本を2冊、新書で読んだが、今回は「プロの弁護士」が監修でついている。ちなみに、小学館の担当編集者は、拙著『スープのさめない距離』と同じM氏である。(M氏から、本書を贈ってもらいました)。
『私塾のすすめ~ここから創造が生まれる』 (齋藤 孝、梅田望夫、ちくま新書: 2008、5、10)
同じ1960年生まれの二人による3回の対談をまとめたもの。齋藤がウェブをやっていないのは意外だったが、その理由はわかるような気がする。それにしても二人とも意地っ張り。そういう素地がなければ、それぞれの分野で代表的な人にはなれなかったのでしょうか?
『会社の電気はいちいち消すな ~コスト削減100の秘策』 (坂口孝則、光文社新書:2009、3、20)
タイトルに100の秘訣と書いてあるのに、番号が69でしかないのはなぜ?
「右肩上がりの時代」は終わったのに、「前年同期比」という妖怪が闊歩していることのおかしさなどは、私は10年以上前から言っていることと同じだが、なかなか耳を傾けてくれる人がいない。
『思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本』 (郷原信郎、講談社現代新書: 2009、2、20)
著者の指摘は、本書のタイトルを含めもっともだという部分が多いが、第6章の思考停止するマスメディアの概略を述べた2ページには異義がある。不二家をピンチに追い込んだ『朝ズバッ』の報道姿勢に関してはその通りだと思うが、だからと言ってマスメディア全体をそうであるかのようにくくるのは、それこそ思考停止ではないか? 社保庁バッシングも、行きすぎに関しては素直に認めるとしても、なぜそのようなバッシングを受けるに至ったかという部分は、申し開きができないのではないかと思った。
『大学進学・就活進路図鑑2010』 (石渡嶺司、光文社:2009、3、30)
著者の石渡さんがこの本のPRのために大阪に来られたので、初めてお会いした。その際にこの本をいただきました。まず、その"分厚さ"に圧倒された。辞書ですよね、これ。のべ1200校を取材、主要16業界の職場の実情、受験モデルプラン、200業種の年収を徹底解説、仕事・業界のことがよくわかる参考図書・マンガを700冊紹介!と帯にある。これをひとりで取材・・・スゴイ!
内容充実しすぎで、全頁を読む人はいないだろうが、自分の興味のある職種をじっくりと読むことができる。そうすると「ほかの職種は・・・」と興味が広がって、つい全部読んでしまうかも。
「業界のことがよくわかる参考書・マンガ」というのは画期的!よくこれだけの本を・・・とこれもまた石渡さんひとりで?スゴイ!
さすがにマスコミ業界の"参考書"は、8割方、読んだことがある本・マンガでした。
巻末の「なりたい職業」で、「ライター34歳」は、おそらく著者の石渡さん本人だ!
『ドキュメント底辺のアメリカ人 ~オバマは彼らの希望となるか』 (林 壮一、光文社新書:2009、1、20)
書名はサブタイトルをメインにして『オバマはアメリカの希望となるか』にしたほうが売れたのでは?内容も基本的にはそういう取材だし。全米各地を歩いて足で取材した生の声が収められている。その意味ではドキュメントよりもルポルタージュといった雰囲気だ。
オバマに対するアメリカの人たちの期待の大きさが感じられる。
翻ってわが日本。ニッポンには、オバマのように若くてやる気と能力のある「チェンジ」できる人はいないのか?
・・・実はここ数年、若くてやる気のある人たちが与党・野党ともにトップに立ったのだ。(もうとっくの昔に忘れ去られていると思うが。)しかし・・如何せん能力が足りなかった。現時点では力不足は否めなかった。で、ベテランに回帰したら、またこの体たらく。どないすればいいのだろうか・・・。