新・読書日記
2009_15
『マリーシア~ 〈駆け引き〉が日本のサッカーを強くする』 (戸塚 啓、光文社新書:2009、1、20)
著者は1968年生まれ。『サッカーダイジェスト』の編集者を経て、30歳でフリーのスポーツライターに。共著の『敗因と』を読んだことがある。
最近、光文社新書は、サッカーの専門的なものをよく出す。今年に入ってからも、
『サッカーとイタリア人』
が出てるし、去年も、
『4ー2ー3ー1~サッカーを戦術から理解する』
など、単なる表面的なサッカーファンを対象にしたのではない本を続々出していて、興味深い。この本では、日本人には欠けていると言われる「マリーシア」の正体について、マリーシアを持ったブラジル人選手たちへのインタビューで紐解いてゆく。日本では「ずるがしこさ」と訳されることが多いが、本当の「マリーシア」とは、そうではない、「駆け引きの巧みさ」を指すのだ。いわゆる「ずるがしこい」プレーのことは、「マランダラージ」と呼ばれるそうだ。
「マリーシア」の、というか「マランダラージ」の代表的な国は、アルゼンチンだそうだ。1986年の「メキシコワールドカップ」における、有名な「マラドーナの神の手」も、「マリーシア」なのだろう。「マリーシア」は「インテリジェンス」であり「クリエイティブ」なのだ!
1月29日の日経新聞のスポーツ欄の、プロ野球評論家・豊田泰光さんのコラム「チェンジアップ」で、豊田さんは「文化守ってこその国際化」と、大相撲やメジャーリーグを俎上に乗せているが、たしかにそのとおり。サッカーにおいては、「日本風のマリーシア」を、選手皆が身につけていけば、昨日(1月29日)のアジアカップ予選でバーレーンに零敗を喫したような不様なことは、繰り返さなくていいと思うのだが...。
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2009、1、29読了
2009年1月30日 10:41
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新・読書日記
2009_14
『落語・昭和の名人決定版・ 五代目古今亭志ん生1/ 火焔太鼓・替り目・唐茄子屋政談』 (小学館CDつきマガジン:2009、2、3発行)
「火焔太鼓」は昭和31年9月3日、「替り目」は昭和35年1月6日、「唐茄子屋政談」は昭和36年6月30日収録。音源はニッポン放送。志ん生は、明治23年6月28日生まれ、昭和48年9月21日逝去。享年83。
志ん生の少しハスキーな高めの声、「ああ、こういう声、こういう語りだったか」と。はっきりと聞いた覚えはないはずだが、なんとなく馴染みがある。(実は大学時代に友人から志ん生の「LPレコード」をもらった。今もある。それで耳にしたことは、ある)
テンポも間も心地よい。「ひ」が「し」になる江戸弁も心地いい。「ああ、名人だなあ」と聞ける。ただ、女性の表現は、志ん朝の方がうまいのではないか?
このシリーズ、2週間に1回出る。26巻まで。
それにしても2009年はCD付きの本やらマンガやらの年明けの読書日記になっています・・・。
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2009、1、25聞了
2009年1月26日 10:39
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新・読書日記
2009_13
『オバマ演説集』 (朝日出版社、CNN English Express 編集部、編:2008、11、25 第1刷・2008、12、1第2刷)
この本とCDが出てすぐ、「情報ライブミヤネ屋」の新聞紹介コーナー(ヨミ斬りタイムズ)で記事を紹介し、自分でも買って聞いてみた。4年前の演説(ケリー・民主党大統領候補の応援演説)と最近の演説では、「落ち着き方が違うなあ」と感じた。また、「とっても聞き取りやすい英語だなあ」とも感じた。と言っても、意味がわかったわけではないんだけれど。そして、「アメリカ人という人たちは、こういった演説に揺り動かされる人種なのだなあ」とも感じた。日本人は、なかなかこうは行かないでしょ?そうでもないですか?コンサートのノリかな。それでも40万部も売れてるんですって!
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2009、1、22聞了
2009年1月26日 10:31
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新・読書日記
2009_12
『若者が3年で辞めない会社の法則』 (本田有朋、PHP新書:2008、11、28)
以前、「若者は3年で会社を辞める」とかいう本(読んだはずだけど)がありましたが、それを逆手にとって「そうならないためには・・・」というような事を書いた本。
「残業ゼロ」を実現した会社「トリンプ・インターナショナル」の話などは、感心はしたが、普通の会社では実現は無理だろう・・・。
第1章のトビラに書かれた、城山三郎『猛烈社員を排す』からの引用である、
「新入社員を迎えるたびに、しゃんとしなければならないのは古参社員の方である。新人の初心を前に、粛然と姿勢を正すべきである。新入社員教育は、新入社員の入社ごとに、古参社員が受けるべきである。」
という言葉が印象に残った。
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2009、1、19読了
2009年1月26日 10:20
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新・読書日記
2009_11
『神の雫 モーニングKC1~19巻』 (作・亜樹 直、画・オキモト・シュウ、 講談社)
この1月から始まった日本テレビ系列、火曜・夜10時からのドラマ「神の雫」。その原作マンガ。テーマは「ワイン」ということで、ワイン好きの私も年が明けてから読み始めたら、これがオモシロイのなんのって!!妻と小学5年の息子までハマって、ほぼ一気に1巻から19巻まで読んでしまいました!
10年あまり前、私がワインにはまったきっかけになったワインも登場します!是非ドラマとあわせてお読み下さい!
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2009、1、17読了
2009年1月20日 10:07
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新・読書日記
2009_10
『魔王』 (伊坂幸太郎、講談社文庫:2008、9、12)
『魔王』と『呼吸』の連作を載せた文庫本。初出は2004年と2005年。世の中が"小泉旋風"に塗り込められていたころだ。著者は、「ここで描かれたファシズムや国民投票はテーマではない」とあとがきで書いているが、あえて書くということは、やはり意識していたということではないか?
「物事の大半は、反動から起きるんだ」マスターの言葉。(141ページ)
「俺が思っているよりも容易く、ファシズムは起きるんじゃないか、って」(146ページ)
「『注文の多い料理店』は、いつのまにかファシズムに飲み込まれる民衆と同じ。」(79ページ)
というあたりに、それは現れているように感じた。
もちろん、主人公の安藤とその弟・潤也の「超能力」が小説の"肝"のように見えるが、やはり本当に著者が提示したかったのは、世の中の空気、一方向に走りだしたときに誰も止められなくなる狂気、だったのではないか。そのあたりは、解説の斎藤美奈子の文章が的を射ていると思う。
「ノーバディグッドマン、昔アメリカで20人殺して死刑になった男。"この世の中で一番贅沢な娯楽は、誰かを許すことだ"(75ページ)
というくだりや、
「細い体型をした茶色の雑種犬だ。うろうろと小屋の周りを歩き回り、しゃがんだと思うと、『ばうばうばう、ばうっ』と、閉まった雨戸に向けてほ(口へんに孔)えた。」(121ページ)という犬の鳴き声はおもしろい。
「"ごきげんよう、おひさしぶり"が"ごきぶり"」(127ページ)
というくだりは、
「"あけましておめでとう、今年もよろしく"を省略して"あけおめ、ことよろ"」
と言うのに似ている。そして、
「ゴキと来て、ブリだからな。あの濁音の続く音はおぞましいよ」(128ページ)
というのは「濁音」の感覚を示していると思った。また、
「頭にちゃんと入ってなけりゃ知識でも知恵でもないぞ。」
という、登場人物のセリフには「そうだよなあ」と同意。なんでもかんでも知識を「外付け」する時代だからこそ。
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2009、1、18読了
2009年1月19日 09:55
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新・読書日記
2009_7
『日本全国「ヨイショ」のツボ』 (岩中祥史、祥伝社新書:2008、12、5)
この著者の本は、以前『名古屋学』というのを読んだことがある。大谷晃一先生の『大阪学』が出たあとに同じ出版社からだったので、どうしても「柳の下のドジョウ」の印象がぬぐえなかったが、その後も研鑽を積まれ、名古屋のみならず日本全国の都道府県の「ツボ」を押さえることに成功したようだ。「ヨイショ」というのは結局、相手の長所と短所をうまく利用する、ということですからね(違うか?)。
この本を読んで感じたことは、「日本全国、狭いようで広いな」と改めて思うとともに、「よくここまで特徴をつかんでいるな」と。
もちろん、読売テレビ制作の「秘密のケンミンSHOW」に対しても来る苦情で、「まるで全県民がそうであるかのような表現はおかしい!」ということはあるだろう。しかし、例外はあるにせよ、全体的にはそういった傾向があることは否めないのではないか?福岡県で高校・大学時代を過ごした女性に、「福岡県人へのタブー句」としてこの本に載っている言葉、
「とはいえ、福岡も九州の一部には変わりないわけですから・・・」
というのを紹介したら、声を上げて笑って「たしかに!」とうなずいていたことからも、「なかなか的を射た表現なのだな」と類推することができました。
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2009、1、11読了
2009年1月19日 09:52
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新・読書日記
2009_6
『オリンピックの身代金』 (奥田英朗(=おくだひでお)、角川書店:2008、11、30初版発行)
おもしろくて一気に読んだ。2009年の正月休みは"小説三昧"、といった感じで収穫。奥田英朗(おくだひでお)さんは1959年生まれ。2004年、
『空中ブランコ』で第131回直木賞受賞。これまでに私が読んだことがあるのは『イン・ザ・プール』ぐらいだったが、ここまで緻密に構成されているのは、
すごい。高村 薫よりは軽いので読みやすい。松本清張にも「時代的背景」が、つまり「空気」が似てる。賭場のシーンは五木寛之『青春の門』を思い出した。
言葉のことで目に留まったことをメモとして。
*秋田・熊沢村の方言で、こまい。「村長なんて、こまい、こまい。国会議員になって、村にも鉄道をひいてけれ」(63ページ)→「こまい」は関西方言かと思っていましたが、全国にあるようですね。
*「檄を飛ばした」(67ページ)、
「今日は久し振りに課長の玉利が顔を見せ、檄を飛ばした。『土日は在宅者も多いので、聞き込みは念入りに行ってもらいたい。(以下略)』」→この意味での「檄を飛ばした」は、やはり定着しているとみるべきか?
*「一ノ橋ジャンクション」(115ページ)?一ツ橋では?霞が関口から首都高に入って、東京タワーを左手に眺めながら。
*「オイチョかぶのオイチョは8。」=スペイン語の「オーチョ」か?「カブ」が「9」。
*「体操用のジャージを着せる」(285ページ)とあるが、時代的には"ジャージー"と語尾をのばす表記では?同じページに「ここの独身寮へ行ってジャージとズック靴を調達してこい」とも。
*「朝食を済ませたあと、飯場で午後十時まで二度寝した。」(290ページ)とあるが、これは"午前"十時の間違いでは?
*「誰が聞いたって鬼嫁かと思うべさ」→このころにはもう"鬼嫁"という言葉はあったのか?(226ページ)
*【レヴィ・ストロースの構造主義】=耳にしたことはある、程度
*東大経済学部の浜野教授「何より国家権力は若い頃から嫌いだ。」(197ページ)と言っているが、「なぜそんな人が、国家権力養成機関とも言える(官僚養成の為の)国立大学の最高学府の教授を務めているのか??」矛盾してないか?不思議。
*「ほとんど引っ越しのような規模で、島田の持ち物の大半が運びだされた。」(389ページ)島田?島崎ではないのか?
なんだか「校閲担当」のような読み方をしてしまいました。
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2009、1、6読了
2009年1月16日 09:48
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新・読書日記
2009_5
『ことばの教養』 (外山滋比古、中公文庫:2008、10、25)
いまから20年ほど前に中公文庫から出た外山滋比古さんの『ことばのある暮し』(1988)、『男の神話学』(1987)という2冊をもとに再編集された
ものだというが、全然、古びた感じがしない。ただ、やはり外山滋比古さんというと、私の大学時代ぐらいに新書でよく読んだので、いまさら・・・と思うのだ
が、復刊して売れているということは、時代を超越しているのだなあと感じました。なお、あと書きは2008年9月に書かれたもの。
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2009、1、4読了
2009年1月 9日 09:46
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新・読書日記
2009_3
『サッカーとイタリア人』 (小川光生、光文社新書: 2008、12、20第1刷)
サッカーとイタリアが好きな人には、たまらない一冊。そして、地元サッカーチームへの愛情は故郷への愛情、カンパリズモ。同じ町のライバルチーム同士の戦い=デルビー(英語ではダービー)に焦点を当てて取り上げた一冊。日本のプロサッカーでのダービーというと、静岡(ジュビロ磐田と清水エスパルス)と大阪(ガンバ大阪とセレッソ大阪)が知られているが本場・イタリアには、もっとたくさんのデルビーがあることを知った。私はサッカーとイタリアに関心があり、愛国心と愛郷心の違いに興味があるので、最適の一冊だった。特にナポリとマラドーナの関係について書かれた章は、1990年のイタリア・ワールドカップで、マラドーナのアルゼンチン代表の試合をナポリで見ただけに、その時のマラドーナに浴びせられたブーイングと声援を覚えているだけに懐かしく、また当時の謎(地元・ナポリなのに、なぜマラドーナにブーイングが浴びせられるのか?)がここで解けて、すっきりした。
著者は1970年生まれで、静岡県の藤枝東高校出身。サッカーどころである。それだけにイタリアのサッカーファンに理解が深いのであろう。
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2009、1、3読了
2009年1月 9日 09:32
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新・読書日記
2009_2
『日本語が亡びるとき ~英語の世紀の中で』 (水村美苗、筑摩書房: 2008、10、31第1刷)
難しい文体で読みにくい。もう少し平易に書けぬものかと思わぬでもない・・・なんて、持って回った言い方は好きではない。率直に言うと嫌いです。
内容は悪くないのに、「この程度の文章を読み取れなくては、文章を読む資格はない」と言われているようで・・・。「文化的なものと商品では、価値基準が違う」という、当たり前のことを、難しく繰り返し書かれてもねえ、という気も。
去年12月の中頃から読み始めて2年越しで、ようやく読破。
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2009、1、2読了
2009年1月 9日 09:29
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新・読書日記
2009_1
『告白』 (湊かなえ、双葉社:2008、8、10第1刷・2008、10、21第8刷)
友人Y君に、年末の忘年会で「この本は新人が書いたものだけどすごい!ふだんは文庫本になったものを買って読むが、これは単行本で買って読んで損はない」と勧められて大晦日に購入。読み出したらこれは確かにすごい!重いテーマを、最初に犯人をバラしながらも、その心理を登場人物それぞれの告白によってあかしていく。微妙にずれる心理は、ある意味、メディアリテラシーの教科書になりうる。つまり、事実と真実は違う。いろいろな角度からの事実のジグソーパズルをはめ込んでいくことで真実は形をあらわす。どこに光を当てるかで、浮かび上がる像は変わる、ということ。それと、基本、一人しゃべりの告白の形式は、最初、戸惑ったが、よく考えたら、芥川龍之介の『藪の中』と同じ形であることに気付いた。ということは、黒沢明が『藪の中』から『羅生門』を撮ったように、この『告白』から映画かドラマができる、よね?タイトルはどうしよう?『羅生門』のように場所を持ってくるなら『プール』でしょうか?
なお、著者は武庫川女子大学卒。ペンネームの「湊」は、神戸出身だからか?
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2009、1、1読了
2009年1月 8日 18:27
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