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#76711月17日(日) 10:25~放送
アメリカ・ニューヨーク

 今回の配達先は、アメリカ・ニューヨーク。ここでジャズトランぺッターとして奮闘する小倉直也さん(31)へ、兵庫県で暮らす父・則雄さん(73)、母・幸子さん(67)の想いを届ける。
 世界のジャズの中心地と呼ばれるニューヨーク。街には屈指のジャズクラブが軒を連ね、毎晩、溢れんばかりの聴衆で賑わっている。直也さんと、サックス奏者で妻の陽菜さん(26)はニューヨーク市立大学クイーンズ・カレッジの音楽科で知り合い、2023年、大学院を卒業すると同時に結婚。ともに本場で活動を始めてわずか1年の駆け出しミュージシャンだ。ある日の仕事先は、マンハッタンのレストランバー。バンドメンバーとステージに立った直也さんと陽菜さんは、相手の呼吸に合わせてアドリブでメロディーを重ねていく。同じ演奏は2度と再現できないのがジャズライブの醍醐味。2人のプレーにお客さんも大いに盛り上がった。とはいえ、ニューヨークは競争が激しく「僕はまだまだ修業が必要。毎日学ぶことが多い」と直也さん。今は依頼された音源を楽譜に起こす仕事や、日本の学生にオンラインでジャズを指導して生活費を稼いでいる。
 高校で音楽講師をしていた母がきっかけで、トランペットに興味を持つようになったのは幼稚園のとき。そして誕生日にトランペットを買ってもらうと、家族が演奏を喜んでくれるのがうれしく、いつしかトランペット奏者になることが夢になった。さらに高校生の頃、ニューヨークを訪れたときに運命的な出来事が起こる。楽器を持って来ていた直也さんは「せっかくだからストリートで吹いてみたら?」と勧められ、挑戦してみることに。するとすぐにお金を投げ入れてくれる人が現れた。これが音楽で初めてお金をもらった瞬間。その感動から13年後、憧れのニューヨークでトランペット奏者としてスタートを切ったのだった。
 演奏だけでなく、ジャズの編曲を手掛け、オリジナル曲も作っている直也さん。今、最も力を入れているのがファーストアルバムの制作で、大学院時代から書き溜めてきた曲をレコーディングしている。「この人たちに自分の曲を演奏してもらいたい」と結成した13人編成のビッグバンドには、陽菜さんのほか、グラミー賞ノミネートの大物ミュージシャンも多数参加。極めて異例のことだが、みな直也さんが作った曲に惚れ込み、格安のギャラで集まってくれたという。そんなアルバム制作を決断させてくれたのが、直也さんにとって憧れの存在である世界的トランペッターの黒田卓也さん。これまでも1枚目のアルバム制作に踏み切れないでいるアーティストを数多く見てきた黒田さんは、ツテもお金も無く躊躇していた直也さんの背中を押し、その場でレコーディングスタジオの手配までしてくれたのだった。「今回のアルバムがこれから先、自分がミュージシャンとして活動していく中で大切なスタートラインになると思う」と直也さん。「ここまでの道のりも長かったですけど、ここからまた、これが最初の一歩になってどんどん広がっていったらいいなと思います」。
 ニューヨークでの息子の活動に、父・則雄さんは「人に恵まれてますよね」と目を細める。また、生活や演奏をともにする妻の陽菜さんに対しても、「そばにいてくださるから、直也自身も心強いんじゃないですかね」と喜び、母・幸子さんも大きくうなずく。
 幼稚園の頃から思い続けた夢の舞台に立ち、さらに今、その夢の先を追い続ける息子へ、両親からの届け物は高校生のときに使っていたトランペットケース。ニューヨークで最初に演奏した時にも携えていたもので、久々に手にした直也さんは「これは原点であり、宝物です」と胸を熱くする。そして、日本から応援してくれている両親に、「もっと立派になって、仕事で日本とニューヨークを行き来できるようになって、大きな凱旋ツアーをしたいですね」と、さらなる夢を伝えるのだった。