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#76310月20日(日) 10:25~放送
オーストラリア

 今回の配達先は、オーストラリア第三の都市・ブリスベン。ここでフローリストとして奮闘する坂部之奈さん(36)へ、静岡県で暮らす父・之宏さん(65)、母・絹代さん(63)、祖母・百合子さん(92)の想いを届ける。
 之奈さんがアルバイトとして週5日ほど勤務するフラワーショップ「Maison Fleur(メゾンフルール)」は、ブリスベン市内に3店舗を構える有名店。オーナーの1人であるバートさんは、2019年にフローリストの世界王者に輝くなど数々の賞を獲得してきた人物で、之奈さんにとっては師匠であり、憧れの存在だ。フローリストになって3年。日本食の高級レストランを彩るアレンジメントを担当し、店頭ではお客さんのリクエストに応えて手際よくブーケを仕上げるが、まだまだ学ぶことばかり。今も志願して週1回は花の卸売市場へ。四季折々の花を覚えるため、午前4時から花を買いつけるバートさんに無給で同行している。
 一緒に暮らしていた祖母の影響で花が好きになった之奈さん。2018年、結婚を機にオーストラリアへ移住し、2020年から現地でフローリストの職業訓練学校に通い始めた。しかし当時は英語がまったく話せず、授業を録音させてもらって何度も聞き直したという。課題も数日遅れながらすべて提出。そんな努力が報われ、卒業後はフローリストなら誰もが憧れるバートさんの店で働けることになった。だが、幼い頃の夢は叶えたものの、ブーケを作ってみても何度もやり直しを命じられ、勤務中に何も出来上がらなかったことも。働けることがうれしい反面、ここにいるべきかと悩んだときもあったという。
 大学卒業後に最初の結婚をした之奈さんは、二男が3歳の時に離婚し、実家に戻った。シングルマザーになり寝る間を惜しんで働く中、息子たちの世話は祖母がしてくれていたという。その3年後、現在の夫である雄介さんとの出会いが。雄介さんはオーストラリア在住だったが、惹かれ合った2人は遠距離で関係を築いていった。そして29歳のとき、結婚と移住を決断。現在は長男が日本に留学中で、雄介さん(42)と二男の煌河くん(13)の3人で暮らしている。実は当時、雄介さんとの交際を隠していたため、両親と祖母にとって再婚と移住は寝耳に水の出来事だった。祖母には「もう帰って来るな」と言われてしまったという。
 仕事で忙しかった父・之宏さん、母・絹代さんに代わって、ずっと子どもや孫の面倒をみていた祖母の百合子さん。之奈さんがオーストラリアに渡ると聞いたときには、つい厳しい言葉を口にしてしまったと振り返る。だが絹代さんはその言葉について、「当時、私には『それぐらい言っておかないと、という思いだった』と言っていましたね」と祖母の真意を明かす。
 スキルアップのため、フラワーデザインの大会にもチャレンジしている之奈さん。ある日はブリスベンの農業祭で行われる、花でひげを飾り付けるというユニークな大会にエントリーした。花の費用は自己負担。モデルの調達も自分でしなくてはならず、ひげをたくわえた男性たちがモデルとして並ぶ中、之奈さんのモデルは息子の煌河くんが務めることに。ワイヤーで作った土台を煌河くんの首からぶら下げひげに見立てると、赤いバラや黄色のランの花で思春期の息子の内面を表現していった。迎えた審査発表。果たして結果は…。
 結婚を機にゼロから花を学び、幼い頃の夢を叶えて3年。世界で活躍するフローリストを目指して日々努力をいとわない之奈さんへ、92歳になる祖母・百合子さんからの届け物はユリの花の絵。百合子さんが自ら描いたもので、孫家族がいつまでも健やかに過ごせますようにとの願いを込め、「元気元気」という文字を書き入れた。祖母の気持ちをくみ取り、涙があふれる之奈さん。そして「まだ全然、親孝行というか、祖母にも両親にもお世話になった分を返せていないことばかりなので…出来るだけ帰って一緒にいる時間を作りたいなと思うから、元気でいてほしいです」と想いを伝えるのだった。