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#7578月25日(日) 10:25~放送
オーストラリア

 今回の配達先は、オーストラリア。イルカウォッチングガイドの柴田ゆいさん(40)へ、東京都で暮らす母・英子さん(60)、妹・まやさん(37)の想いを届ける。
 シドニーから車で3時間。海沿いに広がるポートスティーブンスは、野生のコアラやカンガルー、イルカが生息する自然豊かな港町。ゆいさんが働く「ムーンシャドーTQCクルーズ」はこの地域最大の船舶を所有するツアー会社で、イルカウォッチングを中心に、無人島ツアーや冬のクジラウォッチングなどを企画している。
 ゆいさんの仕事は、湾の中を中心に巡るイルカのウォッチングツアー。朝10時になると、3階建て300人乗りというクルーズ船にはツアー客が続々とやってくる。ガイドとしての腕の見せ所が、イルカを見つけること。実はイルカはレーダーなどでは居場所を特定することができないため、ガイドの長年の経験が頼りになるのだ。こうして目を凝らして海を見ていたゆいさんの前に現れたのは、バンドウイルカの群れ。そして船上のお客さんたちに海を泳ぐ姿を案内する。この湾に約140頭生息するバンドウイルカは1頭1頭背びれの形が違うそうで、何十年も見ているゆいさんはどの群れのどの個体かが見分けられるという。そんなイルカウォッチングは、「自分が楽しんでできているものなので、自分にとっては仕事ではない。一緒にお客さんとイルカを見て、『よかったね』という感動をシェアしたい」とゆいさんは語る。
 イルカを初めて見たのは7歳の時、家族で行ったイルカショーだった。そこで心を動かされて以来、日常の風景はイルカ一色に。姉妹のベッドルームにはクリスチャン・リース・ラッセンが描いたイルカの画が飾ってあったという。その後も熱は冷めることなく、オーストラリアの大学で海洋生物学を専攻。当初は調教師を目指したが、自由に過ごす自然のイルカと仕事がしたいとの思いからウォッチングガイドになったのだった。
 最初はオーストラリアでの様子を心配していた母の英子さんと妹のまやさん。だがガイドとして自身も楽しんでいる姿を見て、まやさんは「おばあちゃんになってもこのままなのかな」と笑う。実は最初は、まやさんの方が先にイルカに熱を上げていたそうで、寝室に飾っていたラッセンの画も幼いまやさんが「一生分の誕生日プレゼントでいいから」とお願いして買ってもらったものだという。だがその後、姉の“イルカ愛”がどんどん高まり、妹を追い越していったと明かす。
 ある日は日本の旅行会社とミーティング。コロナ以降少なくなった日本人観光客を誘致しようと積極的に働きかけている。「こんなにきれいな所なので、来てくれたらリピーターになる人が多い。まずはこのポートスティーブンスという町を知ってほしい」と力を込めるゆいさん。また、自身の将来については「体が動く間はずっと海にいて、イルカのなるべく近くに居続けたいです。死んだ後も灰になって、『イルカのいる海に流して』とパートナーには伝えてあるので、死んだ後もイルカと一緒にいたいと思います」と想いを語る。
 幼い頃からの夢を叶え、いつまでもイルカのそばに居続けたいと願うゆいさんへ、家族からの届け物はラッセンのイルカの画。妹のまやさんがずっと大切にしていた宝物だ。自身にとっても思い出深い1枚に、「もらっちゃっていいのかなって思いますが、すごくうれしいです。彼女の宝物を受け継ぎたいです」と涙ながらに感激する。そして、自分のことを信じていつも応援してくれる家族に改めて感謝を伝えるのだった。