今回の配達先は、ヨーロッパの小国・モナコ公国。ここでバスケットボール選手として活躍する岡田大河さん(19)へ、静岡県で暮らす父・卓也さん(47)、母・寛子さん(46)の想いを届ける。
実は、大河さんの父・卓也さんは現役のバスケットボール選手。現在もアメリカ独立リーグABAの「SHIZUOKA GYMRATS」で代表兼コーチ兼選手として活動している。そんなこともあって、「大河が海外に行くことは大賛成だった」と卓也さん。一方、母・寛子さんは中学3年で海を渡った息子に対して、「もうちょっと近くにいてほしかったという思いはあったので寂しかったです」と本音を明かし、食事など今の生活ぶりを気に掛けている。
大河さんはモナコのプロバスケットボールチーム「ASモナコ」の下部組織にあたる、21歳以下で構成されたチームに所属。身長175センチとチームでは一番小柄だが、ポイントガードという司令塔としてチームの戦術を左右する重要なポジションを任されている。ヨーロッパはバスケットボールの最高峰であるアメリカNBAに次ぐレベルを誇り、チームメイトの顔ぶれもイラン代表の選手や、身長2メートルを超えるウクライナの選手など、世界中からやってきた将来有望な若者ばかり。そんなプロを目指す選手たちの意識は高く、同じチーム内で火花を散らすことも。大河さんにとっては切磋琢磨できる最高の環境で、水を飲む間も惜しんで練習に打ち込んでいる。
バスケットボール選手だった父の影響で、物心がつく前からボールを触っていた大河さん。そのうちにメキメキと力をつけ、中学生のときにはバスケの強豪国・スペインの大会に出場する。そこで世界のレベルの高さを肌で感じ、危機感を持った大河さんは留学を決断。スペインの高校へ進学し、バスケ三昧の日々を送った。そして2023年、念願だった19歳以下の日本代表に選出される。しかし思うように試合をコントロールできず、格上のチームに勝てるチャンスをものにできなかった。その悔しさを内に秘め、大河さんはスカウトを受けたASモナコにやってきたのだった。
自分のことは「不器用」だという大河さん。ただ「できないことでも、徹底的に周りよりやるようにしている。体格も恵まれてなくて海外でバスケをやるのはやっぱり大変なことだし、周りと同じだと使われなくなってしまうけど、何か優れるものがあったらどんどんチャンスが増えていくと思うので、そこは意識してやっています」と努力を惜しまない。そんな大河さんのチームは現在、リーグ2位。プレーオフ進出のため、1つでも星を重ねたい状況だ。迎えた試合当日のコートには、チームメイトの誰よりも早く来て1人で練習に励む大河さんの姿があった。試合が始まると、ポイントガードとして積極的にゲームをコントロール。さらに自らスリーポイントシュートを決め、後半も勢いを落とすことなく攻め続けた。結果、21点の大差をつけ勝利。大河さんも10得点をあげる大活躍だった。
大河さんが常に向上心を持ち続けられるのは、父・卓也さんのある教えがあったからだという。「“自分に対していつも厳しくできる”っていうのが大事だと。まだまだ甘いって言われますけど…」。師匠でもあるそんな父の想いは、同じ「13」という背番号と共に大河さんに受け継がれている。
人よりも不器用だからこそ、誰よりも練習する。自分に対して常に厳しくあろうとし、トップチームで戦うという未来を見据える息子へ、両親からの届け物は昨年、日本代表として戦った時のユニフォーム。大河さんにとっては悔しい思い出の品でもあるが、「絶対に悔しい気持ちを忘れちゃいけないっていうのは自分でも感じていて、それが今まで原動力となってきたところもある。この贈り物をいただいて、改めて自分が何のためにモナコに来たのか、どういう想いをまた持たなきゃいけないのかを思い出しました」。そしてエールを届けてくれた両親へ、「やっぱり一番自分の可能性を信じてくれているなと感じるので、その期待を超えられたらと思ってます」と力強く宣言するのだった。