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#71610月8日(日) 10:25~放送
北海道

 今回の配達先は、北海道。日本最北端の球団で、野球の“三刀流”に挑戦する小野真悟さん(39)へ、兵庫県で暮らす父・稔さん(66)の想いを届ける。「北海道フロンティアリーグ」は2022年にスタートしたばかりのプロ野球独立リーグ。3チームで構成され、真悟さんは北海道北部の士別市に本拠地を置く「士別サムライブレイズ」に所属している。監督は北海道日本ハムファイターズでピッチャーとして活躍した中村勝さん(31)が務め、選手は外国人も含めて27人。真悟さんはこのチームで、ヘッドコーチをメインに選手とGM業を兼任する、いわば“三刀流”に挑んでいる。
 野球が好きだった父の影響でプレーを始め、高校は大阪の強豪校に進学した真悟さん。プロ野球選手を目指して22歳から日本の独立リーグの世界に入り、関西独立リーグをはじめ5球団でひたすら野球に打ち込んだ。そして30歳を前に日本のプロ野球を諦め、アメリカの独立リーグへ。不屈のハングリー精神で野球ができる環境を追い求め、アメリカやメキシコなど7か国15球団を渡り歩いた。しかし2020年、新型コロナの影響で帰国。昨年は九州の独立リーグ球団で監督を務めていたが、今年、その豊富な野球経験を評価され北の大地へやってきたのだった。
 他の独立リーグより歴史が浅い北海道フロンティアリーグからプロ野球選手になったプレーヤーはまだいない。だが甲子園に届かなかった無名の選手たちにとって、ここはプロ野球選手を夢見ることができる最後の居場所だ。リーグの選手契約はAからCまであり、C契約の選手は給料がなく、収入はヒット1本数千円のインセンティブのみ。就労しながらプレーしないと生活していくことができない。GM補佐として選手の給料の査定も行う真悟さんだが、若い選手たちが一つでも上のレベルに行けるよう、コーチとして育成に力を入れている。さらに自ら居酒屋やカフェなどを経営し、選手を支援するため積極的に雇用。そんな中、少しずつではあるものの球場に来るファンも増え、地域の期待も高まりつつあるという。
 ある日行われたのは、阪神タイガースで活躍した坪井智哉監督率いる石狩レッドフェニックスとの試合。首位のレッドフェニックスとは2ゲーム差、絶対に負けられない試合で真悟さんは三塁コーチャーとして選手に指示をおくる。チームは先制を許すも、真悟さんのサインで盗塁に成功した選手や、本塁打・打点で2冠王の佐藤将悟選手(26)の活躍で逆転。しかし度重なるエラーで同点に追いつかれると、最後はピッチャーの暴投でサヨナラ負けを喫した。試合後、ベンチには「君たちはここで完成形なの? 違うよね。上にいくための準備をしないと」と、選手たちを叱咤激励する真悟さんの姿があった。
 そんな真悟さんに野球をするきっかけを与えたのが、父・稔さん。元々、息子を野球選手にしたいと思っていたというが、真悟さんが子どもの頃、生まれて初めて2人でキャッチボールをしたときには、「おでこにボールがポコンと当たりまして。泣いて家に帰ったんです」と秘話を明かす。
 自分では叶えられなかったプロ野球選手の夢を若い選手に託しながら、ボールを追い続ける息子へ、父からの届け物は真悟さんが関西独立リーグ時代に使っていたバッティング手袋。使い込まれぼろぼろになっていたが、父が大切に持っていたものだった。手紙には「初めてのキャッチボールは見事におでこにあたり、泣きながら帰った君がここまで野球に専念するとは予想外だったよ」という驚きとともに、「『ハングリー精神』の思いを馳せて、指導者としてもプレーして下さい」とエールが綴られていた。父の想いを受け、「ここまで僕がプレーできているきっかけを作ってもらったのは、小・中学校のときに父親と毎日練習したから」と感謝する真悟さん。そして「ハングリー精神は父親から教えてもらった財産だと思う。また一段と自分の心持ちをしっかり持って、これから選手としても、コーチとしてもそれを伝えて行けたらなと思います」とさらなる奮闘を誓うのだった。