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#7077月23日(日) 10:25~放送
沖縄県

 今回の配達先は、沖縄。ここで水中ゴミ拾い専門のダイビングショップを経営する東真七水(まなみ)さん(30)へ、奈良県で暮らす父・秀晃さん(60)、母・晃代さん(57)の想いを届ける。
 2022年、恐らく日本で初となる水中ゴミ拾い専門のダイビングショップ「Dr.blue」を起業した真七水さん。開業して1年、まだ余裕もないため、事前の準備から水中でのガイド、後片付けに至るまですべて1人でこなしている。一見すると岩や砂と見分けがつかないが、海の底にはペットポトルや空き缶、タイヤなど様々なゴミが溜まっている。中にはサンゴに絡まった漁網や釣り糸も。お客さんとともに海に潜った真七水さんは魚たちには目もくれず、海中のゴミを探し出しては回収していく。このゴミ拾いに参加できるのは、アドバンスト以上の免許を持つ経験豊富なダイバーのみ。それでもゴミ探しに夢中になって離れてしまう危険性があるといい、常にお客さんの位置には注意を払いながらガイドしている。ゴミの中には年代物の空きビンや時代を感じる日用品などもあって、宝探しのような楽しさも。真七水さんはこうした活動を新たなマリンアクティビティとして捉えているという。
 海のない奈良県で生まれた真七水さんは大学卒業後、大手化粧品会社に就職した。25歳のとき、たまたま旅行で訪れた沖縄でダイビングを体験。美しい海に魅了されると同時に、それまではどこか他人事だった環境問題の脅威を切実に感じるようになった。そしてゴミから海を守りたい気持ちが強くなる一方で、プラスチック製品やゴミを出さざるをえない自分の仕事に疑問が芽生えてきたという。仕事とやりたいことの矛盾、さらには父や母の反応も望んだものではなく、考え込むうちに心身に不調をきたすようになった真七水さん。そんな娘の姿に「そこまで悩むなら…」と両親も折れ、積み上げたキャリアを捨てた真七水さんは何のツテもなく沖縄へ向かったのだった。自らの意思でゴミ拾いを始めた彼女の行動に、地元のダイバーたちも刺激を受けているという。さらに最近は、新たな試みもスタート。海洋ゴミをアクセサリーや食器などにアップサイクルする地元の工房と手を組み、廃棄していたゴミを生まれ変わらせようと計画している。
 反対を押し切ってまで沖縄に渡った娘を心配していた父・秀晃さん、母・晃代さんだったが、日々の活動を見てその本気度に改めて驚いた様子。晃代さんは「ゴミを拾っているとき、すごくいい笑顔をしていたんです。あんな顔、親にも見せたことがないですし、楽しいということが伝わりました」、秀晃さんも「きっと、今の生活が合ってるんやね」と安心する。
 ある日のダイビングポイントは、浦添市にある川の河口。川に捨てられたゴミが海まで流れつき、海底に溜まっているのだという。世界では年間約800万トンものプラスチックゴミが海へ捨てられ、そのほとんどが回収されないまま。一方この日、お客さんと一緒に拾ったゴミは700グラム。これはほんの少しかもしれないが、小さな一歩でも踏み出さないと何も変わらない。だから「一人の百歩より、百人の一歩」と真七水さん。「環境問題は私がめっちゃゴミを拾って解決する問題ではなく、みんなで少しずつやっていく意識がないと絶対海はきれいにならない。だから楽しく遊んでいるんだけど、それが海のためになっているという感じで、全部が全部、正義感でやらなくてもいいんじゃないかと思ってやっています」。
 沖縄の美しい海を守りたいと新たな道を歩み始めたばかりの娘へ、届け物は母の手作りカレー。母からの手紙には、精神的につらかった時に支えてあげられなかったことへの反省と、離れて暮らす寂しさ、今の真七水さんを誇りに思う気持ちが綴られていた。そんな言葉を受け、「海も大好きだけど、家族も大事にできる自分でありたい。どっちも大事にできる素直さと余裕を持てるようにしていきたいです」と真七水さん。そして、久々に大好きな母のカレーを味わい、「おいしい」と笑顔になるのだった。