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#7026月18日(日) 10:25~放送
カナダ・トロント

 今回の配達先は、カナダ・トロント。ここで古着ショップのオーナーとして奮闘する前原美紀さん(36)へ、宮崎県で暮らす母・順子さん(61)の想いを届ける。
 実はカナダは、アメリカに並ぶ古着大国。年齢を問わず身近なファッションとして古着が親しまれており、専門店も数多く存在している。そんな街の中心部に古着店「Shoppu」を構える美紀さん。カラフルで広々とした店内には1960~70年代のドレスをはじめ、たくさんの洋服や小物が並ぶ。商品はすべて自ら目利きをして買い付けたもの。店は、1人1人のお客さんとしっかり向き合うため完全予約制で、月に250人ほどの予約が入るという。実際、店を訪れた常連客たちは、「ここでしか買えないユニークなものばかり」「初めて来た時から私の好みをよく理解してくれている」と美紀さんのセンスを絶賛し、大きな信頼を置いている。商品は貴重なヴィンテージを扱う古着ディーラーや、独自ルートを持つコレクターから買い付けるほか、ほぼ毎日「スリフトストア」と呼ばれる着なくなった服を回収して再販売する店をチェック。買い付けした衣類はコインランドリーで洗濯後、丁寧にアイロンがけして、より魅力的によみがえらせる。時には、リメイクを施して今風にアップデートすることも。美紀さんの感性が古着に新たな価値を加えている。
 3人きょうだいの長女である美紀さんは、小学2年生の時に両親が離婚し、シングルマザーとなった母に育てられた。その後、母は牧場を営む男性と再婚。実は動物が苦手だったにもかかわらず努力を重ねて仕事に励み、その結果、以前よりも牧場を大きくしたという。そんな母を尊敬し、その背中を見て育ってきた美紀さんにとって忘れられないのが、「周りの人が反対しても、自分が突き進めばいいと思ったら自分の意志の通りにやりなさい。あるがままの自分が一番正しいから」という母の言葉。ここまで踏ん張れているのも、その教えがあったからだという。
 美紀さんが洋服好きになったのも、幼いきょうだいの服を手作りしてくれていた母の影響だった。10代の頃から古着が好きになり、高校卒業後はアパレル業界に就職。有名ブランドの販売員として売上全国1位にもなった。24歳で上京し、スタイリストのアシスタントに。その後、チャンスを求めてカナダへ渡り、2020年に古着の本場で自身の店をオープンさせた。ただ当初は苦労の連続で、目の前の売り上げを追い求め、思い描いていた“私の店”のイメージから大きくブレてしまった時期も。だがその時に思い出したのも、「1回決めたことは曲げるな」という母の言葉。「その考え方は何でも通ずる。それをやり出してから、不思議なことに売り上げが上がったんです」と美紀さんは振り返る。
 娘が働く姿を初めて見た母・順子さんは「大きいお店でびっくりしましたし、ちゃんと接客もしているんですね」と感心。そして美紀さんに伝えた言葉については、「いろいろ頭で考えるよりも、行動が先。その先の結果よりも、やることが一番自分の自信につながると思うんです。だから、やりたいことはやったほうがいいと言っていました」とその真意を明かす。
 起業して2年半。自分で決めた道を貫こうと母の言葉を支えに突き進む娘へ、順子さんからの届け物は手作りのバッグとアルバム。「これまでの経験があるから今の自分がいる。自信を持って、信念を貫き、頑張ってほしい」、そんな願いを込めて作ったもので、懐かしい写真の数々が貼られたアルバムの最後のページには、「美紀 あるがままでいい」という言葉が刺繍されていた。母がアルバムを作る姿やそれぞれのページに込めた気持ちに思いを巡らせ、美紀さんは「愛でしかないです」と号泣。そして「これからも自分の意思を曲げず、まっすぐに。まだ弱い部分もありますが、母の方が全然パワフルなので、私もそれに勝るように頑張りたいです」と、さらなる奮闘を誓うのだった。