前回に続いて、配達先はアメリカ・ラスベガス。ここでパフォーマーの世界大会に挑むマジシャンのTanBA(タンバ)さん(50)へ、静岡県で暮らす父・達義さん(78)と母・意好(むねこ)さん(78)の想いを届ける。
現在は東京在住で、都内のマジックシアターを中心に活動しているTanBAさん。サーカスパフォーマーの世界大会「VIVA Fest(ビバフェスト)」に出場するため、エンターテインメントの本場・ラスベガスにやってきた。TanBAさんがエントリーするのは、大会のメインイベントで、招待されたトップパフォーマー10組による世界最高峰のコンテスト「World Circus Arts Championships」。出場者のジャンルはマジックのほか、アクロバティックな空中パフォーマンスやジャグリングなど様々で、さながら異種格闘技戦だ。審査員はシルク・ドゥ・ソレイユをはじめ、世界的なサーカスカンパニーや、公開オーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」のプロデューサーなどそうそうたる顔ぶれ。ここで結果を出せばその場で契約、世界デビューも夢ではない。
迎えた運命の本番当日。持ち時間は1人5分で、パフォーマンスの難易度や芸術性、ショーとしての完成度が審査される。世界のトップクラスが繰り広げる圧巻のステージに、超満員となった会場のボルテージが最高潮となる中、ついにTanBAさんの出番に。「危険なマジシャン」と紹介され、裸にバスローブという姿でステージに飛び出したTanBAさんは、挨拶代わりに一瞬で黄色いタキシードに変身するというマジックを披露。さらに、得意のカミソリを使ったネタなどを次々と繰り出し、驚きに満ちたマジックに観客は大いに盛り上がる。こうして人生の大一番を終えたTanBAさん。「とりあえず全力でやったので、すごく良かったんじゃないかと自分的には思っています」と満足した表情で結果に期待をかける。
いよいよ審査の発表。10組の中からトップ3が選ばれるが、残念ながらTanBAさんの名前を呼ばれることはなかった。しかし、サーカス団が選ぶ審査員特別賞を受賞。しかも今大会でただ1人、サーカス・メカニックスとローンスター・サーカスという2つのカンパニーから賞を受けるという快挙となった。すぐに契約とはならなかったものの、世界的に有名な複数のサーカス団から仕事に繋がる話をもらったTanBAさんは手応えを感じたようだ。
50歳を超えてなお大きな夢に挑み、ラスベガス進出の足掛かりとなる確かなきっかけをつかんだ息子へ、両親からの届け物は、実家が営む石材店の石で作ったメッセージボード。息子のアメリカ進出成功を願って母と父が協力して手彫りしたもので、「とびたて日本 かがやけTanBA」という文字が刻まれていた。両親の思いを手に取って眺めるうちに、30年前に反対を押し切って東京に出てきた頃の記憶がよみがえり、涙がにじむTanBAさん。そして「ラスベガスで自分のショーをやって、世界中のお客さんに喜んでもらう。そんな自分の成長した姿をライブで見てもらいたい。それが恩返しになるかなと思ってます」と両親にメッセージを伝える。それを受け、母・意好さんは「今となってはとことん応援して、成功してほしいというのが一番の思いです」。父・達義さんも「本場を見たいと思っています」と、活躍を心待ちにするのだった。
この収録後、TanBAさんから「大きな進展があった」との報告が。ビバフェストのおかげで、一番出演を望んでいたシュピーゲルワールドというカンパニーと契約を結ぶことができたという。「10年間の片思いが実った感じ」と喜ぶTanBAさん。まずは1年契約だというが、「野球選手と一緒で、1年後にまたもう1年…と、どんどん伸びるように頑張っていきたいと思います」と力強く宣言するのだった。