今回の配達先は、沖縄県の石垣島。養蜂家として奮闘する枝並畝日(うねび)さん(58)、由香さん(56)へ、兵庫県で暮らす娘・日香里さん(28)の想いを届ける。日香里さんによると、一家は元々東京に住んでいたが、母・由香さんに持病があったことや、子ども達を環境のいいところで育てたいなどの理由で石垣島に移住することに。その後、両親が本格的に養蜂を始めたのは日香里さんが島を出る頃だったため、「どういう所で養蜂をしているのか全く見たことがないので、仕事をしている姿を見てみたい」と話す。
自然豊かで、酪農や農業も盛んな石垣島にある畝日さんの会社「石垣島はちみつ」は、設立して10年を迎えた。島には6軒の養蜂家がいるが、専業で営んでいるのは畝日さんだけだ。養蜂場があるのは、まるでジャングルのような木々が生い茂った場所。働き蜂は巣箱と花を行き来し、自分たちの餌として花粉と花の蜜を集める。そしてその花の蜜が、蜂の持つ酵素の働きによってハチミツになる。ハチミツの採取は、本州では春から夏にかけて年に1回行われるが、温暖な石垣島では春と冬の2回採取ができる。畝日さんは、通常は蜂が病気にかからないよう薬を与えるところを、巣箱にハーブを入れて病気を予防。さらにこまめにチェックしたり、清掃をしたりと手間暇をかけ独自のハチミツ作りをしている。集めてくる花の蜜は蜂任せだが、花の種類だけでなく季節や天候によってその都度味が違うのも養蜂の魅力だという。そんなハチミツが持つ自然の風味を活かすため、熱処理も一切行なっていない。こうして完成したこだわりの「石垣島ハチミツ」は500グラムで約6,000円。自宅の玄関先で商品を販売しているが、高級品にもかかわらず人気で完売が相次いでいる。
実は畝日さんは元々有名な競輪選手で、19歳から45歳まで活躍していた。しかし、幼い頃に心臓の手術を受け体が弱かった娘・日香里さんと、「脳脊髄液減少症」という病と闘う妻・由香さんのため、39歳のときに現役のまま東京から温暖な石垣島への移住を決断した。そんな畝日さんが養蜂家になったきっかけは、体にいい食べ物を探していた時、石垣島でもハチミツが採れることを知り興味を持ったことだった。そして12年前に養蜂家に転身。何の知識もなくゼロからのスタートだったため失敗ばかりだったが、独学で研究を重ね試行錯誤を繰り返すこと2年。「最初はどんな蜜が採れるか分からなかったので不安だったんですけど、初めて舐めたときに、ほかの蜜より美味しい、これはいけると思って」。今では島のカフェでも石垣島はちみつが扱われ、フルーティーな味と花のような香りが気に入ったパティシエがスイーツに使ってくれたりと支持を広げている。
石垣島に移住して18年。第2の人生を見つけ、夫婦二人三脚で日々奮闘する両親へ、娘の日香里さんからの届け物はエプロン。石垣島はちみつを設立して10年の記念にと、会社名とロゴが刺繍で入っている。エプロンの裏には、「いつまでも真面目で信念を貫くかっこいいお父さんでいてね」「お母さん、1人で頑張りすぎないでね」と、日香里さん手書きのメッセージが。娘の想いに感激し、涙を流す由香さん。畝日さんも「どんな仕事も大変だけど、この仕事に就いたからには一番を目指して頑張っていきたいと思う」と決意を新たにする。そして夫婦でお揃いのエプロンをつけてみて、畝日さんは「接客は苦手なんですけど、これからは少しずつ頑張っていきます」と照れ笑いするのだった。