今回の配達先は、アメリカ。ツアーガイドとして奮闘する岡田将光さん(41)へ、京都府で暮らす父・広志さん(71)、母・節美さん(68)の想いを届ける。将光さんがアメリカに移住すると知った時は、「ひとり息子なので、本心では行ってほしくなかった」という広志さん。とはいえ、「本人が決めたことなので、反対しても…と思って、本人には言っていないです」と複雑な心境を明かす。
将光さんが拠点とするのは、世界中から観光客が訪れる街・ラスベガス。日本語によるガイドがセールスポイントのツアー会社「JABA」で、8年前からツアーガイドをしている。あるときの仕事は、世界最大規模の渓谷・グランドキャニオンをメインに、パワースポットとして有名なセドナなど全行程1200キロを1泊2日で巡る人気のツアー。将光さん自ら運転し、まずはラスベガスから約500キロにあるセドナへ向かう。名所の案内や写真撮影を満喫した後は、将光さんが一番思い入れのある場所・グランドキャニオンへ。夕日に照らされた絶景と将光さんが語るこの地の歴史に、お客さんは驚き、感動の面持ちになる。翌朝も再びグランドキャニオンを訪れ、今度は朝日に照らされ刻々と表情を変える姿を堪能。これまで同ツアーを1000回近く行い、グランドキャニオンには2000回は訪れているという将光さんだが、それでも「僕はお客さんに説明するのが好き。自分が感動したものを分かってほしいし、『それは知らなかった』って言ってもらえたら『よっしゃ!』って感じですね」と、何度行っても飽きることはないと話す。
将光さんがグランドキャニオンに魅せられたのは、大学時代。偶然目にした1枚のパンフレットがきっかけだった。雄大な渓谷の写真に衝撃を受け、どうしても実際に見てみたいと18歳でアメリカへ留学。念願の初訪問のときには、「『なんじゃここは』とぶっ飛んだ。自分の世界は本当に狭かったんだなと思い、世界観が広がった」と、さらなる衝撃を受けたという。大学卒業後は日本で就職するが、会社員生活に馴染めず、遂には十二指腸潰瘍に。そんな頃にやりたいことをやろうとアメリカ行きを決め、そして毎日のようにグランドキャニオンを感じることができるツアーガイドになった。日本の両親は渡米に反対しなかったものの、あまりうれしそうな顔はしていなかった。ひとり息子ということもあり、「親不孝なところもあるなと自分でも思っている」と明かすが、両親の本音は今も聞けないままだ。
現在、新しいツアーを計画中の将光さんは、下見のため休日もセドナへ。そこで現地の人だからこそ知るパワースポットに案内してもらい、ネイティブアメリカンに伝わる浄めの儀式に参加する。初めて見る光景と貴重な体験に感激した将光さん。「普通じゃなかなか来られないところに来られるようにするというのも、僕の仕事のひとつ」と、これまでになかったツアーを実現しようと意気込む。10代でグランドキャニオンに心を奪われ、今も変わらず魅了され続けている息子へ、父から届け物は将光さんが初めてグランドキャニオンを訪れた時の日記。ノートには当時の感動がびっしりと書き込まれていた。さらに添えられた手紙には、「将光が書いた日記を読んだら、ほんまにグランドキャニオンが好きであこがれていたんやな。この仕事がほんまに好きで合ってるんやなぁとうれしく思います」と綴られていた。父が理解してくれていたことを知り、目頭を押さえる将光さん。「本当に感謝ですし、自分のやってきたことをちゃんと見てくれているんだなと…。これからも今やっていることに情熱を持って、やり続けていきたいと思います」と改めて奮闘を誓うのだった。