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#6484月17日(日) 10:25~放送
フランス・パリ

 2013年、フランス・パリで和菓子職人として奮闘していた村田崇徳さん(当時35)。世界を代表するスイーツの都であるフランスで和菓子を広めたいと、パリの中心地に和菓子専門店「和楽」をオープン。抹茶などとセットにして常時8種類ほどの菓子を提供していた。毎朝の仕込みは和菓子の基本であるあんこ作りから。材料は、少しでもフランスであんこが広まりやすいようにと、あえて日本産ではなく現地で手に入る小豆にこだわる。また店内は、客がカウンター越しに和菓子を作る様子が見られるスタイルにした。店を開いて2年。客の6割ほどが地元のフランス人で、オープン当初に比べると満席になることも増えてきたが、まだまだ儲けは出ていないという。
 老舗和菓子屋の三代目として生まれた崇徳さんは、京都の和菓子店で修業。2005年に「海外で働きたい」という憧れから、父の反対を押し切りパリへ。何のツテもなく、フランスの日本料理店で初めてミシュランの星を獲得した割烹「あい田」に飛び込んだ。オーナーの相田康次さんが手掛けるメニューは、鉄板懐石のおまかせコースのみ。そんな料理の締めくくりに、崇徳さんの和菓子が登場する。あい田にはヨーロッパ各地から美食家が訪れるが、日本料理は知っていても和菓子は初めてという客がほとんど。相田さんは「正直、フランスのお客様は和菓子を理解していない。“これを食べられないと日本文化を理解したことにならないんじゃないか”と、無理やり食べている感じ」と厳しい現実を明かす。そんな相田さんの期待を背負う崇徳さんは、どうしたら和菓子をフランス人に受け入れてもらえるか毎日試行錯誤する。そして、まずは馴染みを持ってもらうため、フルーツやチーズを使った創作和菓子も試作していた。
 様々な努力が実を結び始めている一方で、日本には跡取りとして帰りを待つ両親がいる。「親の気持ちもわかるし、相田さんの期待にも応えたい。両方がうまくいく方法をいつも考えているのですが、本当に難しい…」。フランスと日本の間で揺れ動く息子へ、父からの届け物は和菓子作りの道具。祖父が手作りしたものを父が受け継ぎ、毎日使い続けてきたものだ。店の歴史、職人としての父の人生が刻み込まれた大切な道具を手に、崇徳さんは「責任重大ですね。これに恥じないような職人になりたい」とその重みを噛みしめたのだった。 
 あれから9年。山口智充がパリの崇徳さん(44)とリモート中継をつなぐ。2016年に「和楽」を辞め独立した崇徳さんは現在、店舗は持たず、レストランや個人客に向けて和菓子を卸しているという。さらに、間もなくオープンする持ち帰り専門のカフェで和菓子のプロデュースに携わり、創作大福を中心に販売する予定にしている。実は、この9年の間に起こった一番大きな変化が、パリで起きている“大福ブーム”。今や大福は「モチ」という名前でパリの人々に認知されており、つぶあんの代わりにフルーツソースやアイスクリームが入っているものが特に人気なのだそう。また大福だけでなく、和菓子の腕を見込まれた崇徳さんのもとには、2つ星レストランのシェフからのし餅の注文が入るようになった。フランスでは「あんこはまだまだ難しい」とは言うものの、和菓子を広めたいという想いが着実に実を結んでいる崇徳さん。プライベートでは結婚し子どももできたことから、実家のことは頭の片隅に置きながらも「こちらで頑張っていきたい」とますますの奮闘を誓うのだった。