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#6116月20日(日) 10:25~放送
鹿児島県・徳之島

 鹿児島県の徳之島でコーヒー豆作りに奮闘する「宮出珈琲園」の宮出博史さん(44)へ、元妻の内山信代さん(44)の想いを届ける。信代さんは現在、大阪でヘアサロンを経営。かつては宮出さんもヘアサロンの隣でカフェを営んでいた。3年前、コーヒーに本腰を入れるため宮出さんはひとり、徳之島へ移住。一方、徳之島育ちで農業が嫌だから大阪に出てきたという信代さんは、「私はやりません」と断ったといい、「やるのなら応援するけど、自分だけで行って」と告げたと当時の経緯を明かす。
 鹿児島市から南南西におよそ460kmに位置する徳之島は、一年を通して温暖な亜熱帯性気候の島。宮出珈琲園は島南端の伊仙町にあり、木々が鬱蒼と生い茂る光景は農園というよりもまるでジャングルのようだ。ここでコーヒー栽培を始めたのは13年前。経験ゼロからスタートし、現在は東京ドーム2個分の広大な森で3000本を栽培している。だが、豆が収穫できる木は300本ほどで、1店舗分にも満たない。コーヒーが実るのは暑い国というイメージがあるが、実は木が育つ適温は21度。最初に植えた2500本は日本の猛暑に耐えきれず、4年でほぼ全滅してしまったのだ。そんな失敗を経験してからは、島の気候に合った栽培法を模索。そして自然の力で育てる独自の農法にたどり着いた。栽培から11年目に、わずか30kgながらやっとコーヒー豆の生産に成功。今年もどうにか収穫ができ、3年後には手作業では追いつかないほどの収穫量になる見込みだが、現状コーヒーによる収入はほぼゼロ。宮出さんの試みに共感する全国のコーヒー好きやファームステイの若者達の協力を得てなんとか踏みとどまっている。そんな中、今年からは伊仙町が作業場を安い賃料で提供してくれることに。コーヒーを町の特産品に、さらには産業化を目指して町ぐるみのバックアップを受けている。
 コーヒーに夢中になる前は、焼き鳥店の若きオーナーだった宮出さん。25歳で開業し、大繁盛していた。信代さんとはその頃に出会い、結婚。2人の娘に恵まれるも激務が続いた。そこで家族の時間を大切にする生き方を求め、30歳で焼き鳥店を閉店。信代さんの故郷である徳之島にコーヒー農園を、大阪には信代さんのヘアサロンと自分のコーヒーを提供するカフェを作った。5年経てばコーヒーに実がつき軌道に乗るだろうと考えていたが、4年目で木が全滅。貯金もモチベーションも減っていく中で大阪と徳之島を行き来していた宮出さんに、信代さんは「中途半端になってるから本腰を入れてやった方がいいんじゃないか」と言い、遂には娘から「お母さんを解放してあげて」と離婚を嘆願されてしまう。家族を翻弄していたことに気づいた宮出さんは信代さんと娘の言葉を受け止め、3年前カフェを閉店し離婚。コーヒー作りに集中するため徳之島へ移住した。実は現在、長女の美琴さんは父の農園を手伝っている。小学校を卒業すると、自らの希望で沖縄の離島にある中学へ山村留学し、徳之島の高校に進学することを選んだのだ。妹の歓菜さんも長野県の中学校で山村留学中。家族4人バラバラの暮らしを、美琴さんは「離れてから家族全員が仲良くなった気がします」と話す。
 農園を始めて13年。現在は菌を利用して味をおいしくする研究にも取り組み、理想のコーヒーの完成まであと少しと近づいた。そんな今、信代さんには「収穫までたどりつけたのはあの人のおかげ。ここまで支えてくれた人はいない」と感謝する。コーヒーという夢に翻弄され、バラバラになり、そして再び繋がる家族。コーヒー作りに人生を賭ける宮出さんへ、別れた妻から届けられた想いとは…。