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#6085月30日(日) 10:25~放送
ドイツ

 2017年、ドイツで音楽家として奮闘していた曽我部直親さん(当時52)。フランスとの国境の町・ザールブリュッケンにある住まいには、様々な種類の弦楽器が並ぶ。中でも、直親さんが専門とするのが伝統楽器「リュート」。ヨーロッパでは“楽器の女王”とも呼ばれ、16世紀から18世紀にかけてはピアノに代わる主要楽器だったという。折れ曲がったネックに張られた弦は22本もあり、チューニングだけでも一苦労。多彩な表現が可能ながら、とても演奏が難しい楽器だ。さらに、リュートの祖先ともいうべき楽器「ウード」も彼の専門。5000年前にアラブで誕生し、日本にはシルクロードを渡り「琵琶」として伝わったとされるもので、アラブ諸国では今なおポピュラーな楽器なのだそう。繊細な音色のリュートに比べて、ウードは力強い音も奏でることができるといい「同じ形の楽器でも、リュートとウードは響きが全然違う」と直親さん。独自の音楽を作ろうと自ら作曲も手がけ、これまでに7枚のアルバムをリリースした。そんな彼を公私共に支えるのが、フランス出身のエリザベートさん(当時42)。幼稚園の先生で、ダンサーとしても活動している彼女との交際期間は8年になり、数日後に結婚式を控えていた。
 15歳の時にリュートの存在を知り心を奪われた直親さんは、22歳で単身ドイツへ音楽留学。しかし三半規管の情報が脳に伝わらなくなり、平行感覚を失うという病におかされ、2年間ほぼ寝たきり状態になってしまう。日本ではリュート奏者としての活動の場が少ないためドイツに残ることを決意するも、10年以上も演奏活動ができず、絶望の毎日だった。だが闘病中も息子の夢を信じ励ましてくれた母のためにも諦めずリハビリを続けた直親さんは、その一環で始めたタンゴのおかげで38歳の時に音楽家として復帰。そしてタンゴが縁でエリザベートさんと出会い、ゆっくりと時間をかけて愛を育んだ2人はついに結婚式を迎えた。祝福に駆けつけてくれた大勢の音楽仲間の前で、直親さんは式に出席できない母を想い作った曲を披露。ずっと言葉にできなかったことを音に託した。そんな母からの届け物は、1枚の美しい着物。妻となったエリザベートさんは感激し「離れていても、結婚式に来てもらったような気がしてとてもうれしい」と言って涙をこぼしたのだった。
 あれから4年。ドイツの直親さんとぐっさんがリモートで中継をつなぐ。以前は直親さんの自宅と隣町のフランスにあるエリザベートさんの家を行き来していたが、結婚後に中古の一軒家を購入。夫妻でDIYしてリノベーションした新居はゆったりとしたダイニングとキッチンが自慢で、2人共通の趣味である料理などを楽しんでいるという。直親さんの母は、82歳の時に他界。だが結婚式を挙げた翌年に新婚旅行として日本へ帰ったそうで、エリザベートさんも母と対面を果たし最後の親孝行ができたという。そんな直親さんへ、ぐっさんは演奏をリクエスト。直親さんによるウード、エリザベートさんのダンスで「母が好きだったウードの調べ」を披露する。