2020年、野生動物の最後の楽園・南アフリカで取材したサファリガイドの太田ゆかさん(当時25)。アフリカ随一の大都会・ヨハネスブルクから車で6時間、四国ほどの大きさがあるクルーガー国立公園を中心とした動物保護エリアで生活しながら活動していた。ゆかさんが所属する動物保護ボランティア団体「アフリカンインパクト」は、動物保護エリア内におよそ18ヘクタールのロッジを所有。ロッジには世界中から動物保護を学びたい人たちがやってきて、彼らを連れて保護区内を安全にガイドするのがゆかさんの仕事だ。東京ドームが800個以上も入る広大な保護区には、500種類以上の動物が小さな生態系を作っている。そんな生態調査のために行うサファリドライブは、サバンナの中を運転しながら動物を探して、見つけることができたらノートに記録をとってデータを収集するという地道な作業。ゆかさんは道なき道を車で進みながら動物の声を聞き、匂いを感じ、足跡を探す。アフリカに来て4年半、こうして毎日サバンナを駆け回る生活だが、「この環境が好きすぎて、ここ以外のところに住みたいとは思わない。不便さよりもサバンナの中で住めることの方が私にとっては大事」と語る。
幼稚園の頃にはすでに「動物保護の仕事をする」と目標を定めていたほど動物が大好きだったゆかさんは、大学2年の時にボランティアとしてアフリカへ。帰国後すぐに移住を決意し、翌年には英語もろくに話せないまま南アフリカのサファリガイド訓練学校に入学する。電気もない過酷な環境の中で猛勉強し、日本人女性で唯一、南アフリカの国家資格を取得。ロッジに7人いるガイドの1人として活動を始めた。そんな憧れの地に来て初めて知ったのが、どんなに手を尽くしても奪われる命があるという現実。保護区の中であっても象牙などを狙った密猟者の罠が仕掛けられ、常に動物の命が脅かされている。アフリカの動物保護は密猟者との戦いでもあったのだ。
20歳の時からがむしゃらに自らの道を切り開いてきたゆかさんは、今また新たな道を模索していた。将来的にはサファリのツアーをすべて自分で行い、日本の観光客にツアーの楽しさだけでなく動物保護の大切さを知ってもらいたいと考えている。「サバンナで動物に囲まれながら生き続けて、サファリガイドとして日本人を受け入れながら暮らせたら最高だし、理想です」と夢を明かしたのだった。
あれから1年。南アフリカでも新型コロナウイルスの影響は大きく、ロッジは閉鎖し、ゆかさんもサファリガイドの活動ができなくなってしまった。そこで新たに始めたのが、「バーチャルサファリ」。日本と南アフリカのサバンナをオンラインでつなぐ生配信サービスで、YouTubeを使って相互で会話しながらガイドするのだという。今回、ぐっさんと中継を繋いだゆかさんは、保護区の中を案内。車を走らせながら次々と野生動物を発見し、解説も交えながら臨場感たっぷりにサバンナの魅力を伝える。ゆかさんが指し示す先には、ケープキリンの親子やインパラの群れ、さらには水場で泳ぐアフリカゾウたちの姿が! また、いまだ後を絶たない密猟の現状を紹介。そして、前回語っていた自分でガイドツアーをするという夢について、ゆかさんが今の想いを明かす。