7年前、“ビッグアイランド”の愛称を持つハワイ諸島最大の島・ハワイ島で、ドルフィンスイムガイドとして奮闘していたジョーデン・大輔さん(当時27)。アメリカ人の父と日本人の母を持つ大輔さんは、日本で医療事務の仕事をしていたが、25歳でハワイに渡り長年の夢だったドルフィンスイムガイドを始めた。大輔さんの1日は早朝のお弁当作りから始まる。そして日本人が経営する小さなツアー会社へ出向いてウェットスーツを用意し、ツアー客をホテルからピックアップ。小型ボートに乗ってイルカがいるポイントへと案内する。イルカと一緒に泳ぐことを夢見てやってくるお客さんたちの貴重な経験を、楽しい時間にしてあげたいとの思いでガイドする大輔さん。ちょっとした海の変化を見逃さずイルカを発見し、この日は400頭もの大群に遭遇。イルカたちの様子を伺いながら客をすぐそばまで誘導した。そんな大輔さんのことを、コンビを組むツアーのキャプテンは、「真面目ですごく良いガイド。一言で言うと“イルカ馬鹿”」と評し、日々ガイドとして成長する姿に感心する。ドルフィンツアーは大成功のうちに終了。大輔さんは後片付けをすませてお弁当を食べた後、夜のマンタツアーに備えてしばしの休息をとる。すべての仕事が終わったのは、深夜12時近く。だがそんな生活も「僕が一番癒されているので、苦ではない」と笑う。
大輔さんは、実はハワイ生まれ。父親の仕事の関係で、5歳のときに日本へと移り住んだ。少年時代はハーフであるがゆえのいじめに遭い、誰とも遊ばず部屋に引きこもってイルカの図鑑を眺める毎日だったという。その頃、イルカとともに支えとなってくれた存在が祖母の富士子さん。共働きで忙しい両親の代わりとなり、何かあれば全力で守ってくれた祖母のことを、大輔さんは“お母さん”と呼んでいる。そんな“お母さん”のおかげで目標を見つけ、ハワイへ旅立った大輔さん。今は「クジラと一緒に踊ること」という大きな目標に向けて、仕事の合間には自己研鑽にも励む。ハワイで夢も膨らみ、たくましく成長した孫に届けられたのは、祖母が握ったおにぎり。少年時代、いつも力をくれた“おふくろの味”を久々に口にした大輔さんは思わず涙をこぼしたのだった。
あれから7年。ハワイ島で暮らす大輔さんも新型コロナウイルスの影響を受け、1年前からツアーが全て止まってしまったという。最初の2か月は外出自粛となり、船を出すことすら禁止に。しかし、ロックダウンのおかげで海の美しさが以前よりも増したうえ、「イルカや動物たちの機嫌が良くなっている」と思わぬ変化があったという。そして「泳げない期間があると、会えた時に以前には感じたことのないものを感じて、感謝の気持ちやイルカに対しての愛を再認識させられた」と大輔さん。ツアーガイドの仕事が完全にストップしている現在は、ハワイ島の自然を愛するガイドたちとともにインターネットサイト「ビタミンハワイ」を立ち上げ、ハワイ島の大自然を愛する世界中の人々に今のハワイ島の姿を配信している。大輔さんは今の海で撮影した生き物たちの美しい映像を紹介し、さらにこの7年の間に起こった変化をぐっさんに報告する。