今回の配達先は、ハワイ。世界中から観光客が集まるリゾート地・オアフ島でフラダンサーとして奮闘する由美子グリーンさん(50)へ、神奈川に住む父・好雄さん(79)、母・防子さん(75)の想いを届ける。
普段はワイキキ最古の格式あるホテル「モアナ・サーフライダー」でのフラショーに出演する由美子さん。しかし3月中旬から新型コロナウイルスの影響で全てのレストランのショーが中止になった。観光客が激減しエンターテインメントが軒並みキャンセルされる中、現在の仕事は週に一度任されているホテル「アウトリガー・ワイキキ・ビーチ・リゾート」でのウェルカムフラショー。エントランスで2時間休みなく踊り続けお客さんを出迎える姿は優雅にも見えるが、「膝を曲げて常に中腰で踊っている感じ。顔は笑顔ですけど、体はボロボロ」と苦笑する。
フラを始めた動機は純粋なものではなかった。かつて日本で満員電車に乗っているとき「一生ここにいちゃいけない」と感じた由美子さんは、当時母親がフラを習っていたことから、海外に出る言い訳として「本場でフラを習いたい」と言って26歳でハワイに移住。最初は全く興味がなかったが、フラを学び始めるとその神秘的な力にどんどん魅了され、稽古に明け暮れるように。そしてたった2年で、オアフ島で開催されたフラの大会で優勝するまでになった。私生活ではアメリカ人男性と結婚するも、すれ違いが原因で離婚。シングルマザーとして息子を養うためマッサージ師の資格を取り、昼間はマッサージ、夜はフラ雑誌のコラムを執筆するなど休みなく働いた。日本の両親にもサポートを受けながら子育てをする中、フラには携わっていたいと週に一回だけレストランのショーで踊っていた頃、現在の夫であるジョンさんと運命的に出会い、4年前に再婚。フラを続けていたことで幸せな人生に導かれたと由美子さんはいう。
そんな彼女だが、実は体に大きな問題を抱えていた。背骨がS字に曲がる重度の「思春期特発性側彎症」という持病を患い、今は整体院に通うなどして痛みをごまかしながら踊っている状態なのだ。これ以上悪化して歩けなくなってしまう前に手術をしなければいけないが、手術をすれば腰が曲がらなくなるかもしれず、プロのダンサーとしては引退しなければならない。長年その葛藤と戦っていたのだった。そばで見守ってきたジョンさんも、「そろそろ決断しなきゃいけない」と言うが…。
今でも週に一度、師匠の下でレッスンを受けている由美子さん。「フラの学びは深くて、終わりはない」といい、そして「手術が成功するかもわからないし、車椅子になるかもしれないけど、フラは車椅子でも表情とハンドモーションで踊れる。なので続けられる限り続けていきたい」と前を向く。その娘の姿に「よっぽどフラが自分に合っていたのでしょうね」という母・防子さん。一方、父の好雄さんは手術について「なかなか踏ん切りがつかないんじゃないですか。でも身体の事を思うと、何かが変化しても構わないんじゃないかな」と親心を見せる。
最初は母の影響で何気なく始めたフラ。そんなフラに人生を捧げ、体が動く限り踊り続けたいと願う娘へ、母の想いが届く。