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#5677月19日(日) 10:25~放送
海の向こうの大切な人は今… カナダ・カルガリー

 5年前、カナダ・カルガリーでプロのマジシャンとして奮闘していた小野厚さん(当時35)。2009年にニューヨークで行われたマジック国際大会で2位、観客投票では1位に選ばれた実力を持ち、“クローズアップマジック”という至近距離で見せるマジックを得意とする。仕事の依頼があれば、車に衣装や機材を積んで数百キロ離れた街まで1人で移動。ステージがない会場では自分でスペースを設営し、マイクなどの音響からBGMのコントロールまで、すべてを自身でこなす。本番がスタートすると、音楽とトークに乗せてマジックをテンポよく展開。お客さんや主催者を大満足させる厚さんだが、「マジックって、不思議なことが起こるまでのプレゼンテーションや話し方が退屈な感じだとお客さんの心は掴めない。でも変に面白くしようとし過ぎると、最後の“不思議さ”が欠けてしまう。そのバランスが難しい」と明かす。
 大学時代、何気なく参加したマジックサークルがきっかけでマジックと出合い、大阪のマジックバーで2年間プロとして活動。6年前、「海外で実力を試したい」と、フィアンセの直実さんとともにカナダへ渡った。しかし、永住権を取得するまでの4年間はビザの関係でマジシャンとして働くことができず、立っていたのはステージではなく寿司屋の板場。プロとしての技術すら失いかねない危機的状況にもかかわらず自分たちの力ではどうすることもできない苛立ちから、2人は幾度となく衝突する。それでも厚さんは「挑戦してダメだったのならともかく、『カナダでやっていく』と言って出てきたからには、マジックをすることもなく帰るわけにはいかなかった」。2年前からようやくマジシャンとして仕事ができるようになり、「今は企業のパーティーや結婚式がメインだけど、テレビやメディアに出る有名なマジシャンになりたい」と、自分なりのスタイルを模索している。
 こうして夢に向かって歩み始めた2人だが、ひとつ気がかりなことが。厚さんと直実さんは「コモンロー・パートナー」という、カナダの法律で定められた夫婦に近い家族関係にあるのだが、どちらの両親からもなぜ籍を入れないのかと言われているという。直実さんは「カナダでは結婚しているのと同じような形で認められているので、そういう焦りがなくなってしまう。でも、日本の両親と話すとちゃんとしないといけないのかなとは思う」と悩む。そんな直実さんに支えられながら日々技術を磨き、世界のトップを目指す厚さんに届けられたのは、両親が営んでいた喫茶店で使われていた2客のコーヒーカップとソーサー。感激した厚さんは「両親はいつも2人で1つという感じで、とても仲が良かった。セットで送ってくれたのを見ると、自分たちみたいに仲良くやっていけよというメッセージを感じます。近いうちに籍を入れて、どちらの両親にも安心してもらいたいです」と、決意を語った。
 あれから5年。前回の取材以降、大きな仕事がいくつも入り充実した活動を重ねているという厚さん。さらに、地元の劇場で開催されているバラエティーショーでは、観客投票で年間を通して1位に輝いたといううれしいニュースも。マジックでは“不思議さ”を見せながらも「関西人なので笑いがほしい」という厚さんは、海外の笑いの文化やセンスの違いが年々わかるようになり、自分のスタイルが築けてきたのを実感しているそう。パートナーの直実さんとは、2019年に入籍。「彼女がいなかったら僕もここまでできてなかったと思ってます」と感謝する。また、ぐっさんとテレビ電話をつなぐことが決まってから“リモートマジック”を考案したといい、画面越しというシチュエーションならではの、トランプを使わないトランプマジックを披露する。