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#5544月5日(日) 10:25~放送
ニュージーランド

 今回の配達先は、ニュージーランド。南島にある小さな町・ワナカで寿司屋を営む鈴木昭子さん(45)へ、兵庫県に住む父・正彦さん(75)、母・由美子さん(73)の思いを届ける。娘がニュージーランドで寿司屋を開業したことについて、「そうみたいですね…」と戸惑い気味の正彦さん。由美子さんは、移住前に寿司の学校に通った昭子さんの行動を不思議に思っていたと明かし、娘は何でも事後報告だと口を揃える。
 クイーンズタウンから山あいの一本道を走ること1時間、昭子さんが暮らすワナカに到着する。町のシンボルであるワナカ湖はニュージーランドで最も美しいといわれ、湖畔には見渡す限り大自然の絶景が。南島の小さなリゾートタウンとしても注目され、夏には世界中から観光客が集まり賑わいをみせる。そんな繁華街のはずれにある昭子さんの店「AKI寿司」は、1年前にキャンプ用のコンパクトなトレーラーを改造してオープンした。1日に作る寿司は300貫にもなるが、午前11時に営業を開始すると待ちわびたお客さんが続々と来店し、早い日には2時間で売り切れることも。値段は1貫1ドル50セントから3ドルと、物価の高いニュージーランドでは格安。食材は日本でも通用する品質のものしか仕入れないためネタの種類は少ないが、定番の握りのほか海外では欠かせないサーモンアボカドなどの巻き寿司、さらにはベジタリアン用に開発した野菜寿司など、出汁を使って日本食らしさを守りながら現地の人の好みに合わせて工夫している。そんな昭子さんの寿司は「新鮮でとてもおいしい」「日本で食べたお寿司と同じだ」と評判も上々。開店してわずか1年で今や町の人気店となった。だが、実は昭子さんは寿司屋で働いた経験はゼロ。ワナカへ渡る前に「日本人なので、お寿司が握れたら何か武器になるかなと思って」と日本の寿司学校に通って技術を習得したといい、移住したのは決して寿司のためではなかった。
 昭子さんがワナカで暮らそうと決めたのは40歳のとき。25年前にワーキングホリデーで訪れたワナカの雰囲気にすっかり魅了され、結婚して2人の男の子を授かってからも将来は海外に住めたらと夢を抱いていた。そして4年前、ついに家族4人でのワナカ移住が実現。苦労の末ビザを取得し、昭子さんと夫の仕事もそれぞれ見つけて準備は万端だった。しかし夫は英語の環境がストレスとなり、海外生活に馴染めず帰国。希望に満ちた暮らしはたった1カ月で破綻してしまう。そのとき昭子さんが下した決断は、この地で息子たちと3人で生きること。シングルマザーとなった昭子さんは稼ぎを増やすため、会社を辞め1年前から寿司屋を始めたのだった。
 昭子さんは35歳で甲状腺にガンを発症。幸い命に別状はなかったが、このことがきっかけで人生一歩先には何が起こるかわからないと痛感し、「やりたいことは必ずやる」と決意したという。最初はワナカで生活するために始めた寿司屋も、お客さんの喜ぶ顔を見ているうちにこれも“やりたいこと”に変わった。息子たちは現在、13歳と9歳に。自分の意志でワナカに残ることを決めた彼らは、この4年間ひと言の弱音を吐くことなく大きく成長。夏休みには長男が店のお手伝いをしてくれるようになった。
 ニュージーランドへ渡って4年。やりたいことは必ずやると決め、息子たちとともに思う道をまっすぐに進む娘へ、日本の両親が届ける思いとは。