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#5503月8日(日) 10:25~放送
カンボジア・バッタンバン

 今回の配達先は、カンボジア。ラーメン店店主として奮闘する元田土茂さん(42)へ、大阪で暮らす父・藤男さん(73)、母・悦子さん(69)の思いを届ける。悦子さんは息子のこれまでについて、「食べることに興味があって、食に携わることからはずっとずれていない」と話す。ただ「1人なら面白い人生かなと思うけど、初めて向こうで孫ができたので…」と心配も。一方、藤男さんも「早く会いたいなと思ってるけど、なかなか」と、孫との初対面を心待ちにしている。
 アンコールワットがあるシェムリアップから車で4時間。カンボジア北西部の都市・バッタンバンは国を代表する米どころで、高級米の産地としても知られるのどかな田舎町だ。その町の中心部にあるのが、昨年3月にオープンした土茂さんのラーメン店「ライスホリック」。日本食さえ浸透していない田舎町初のラーメン店で、豚骨や味噌など本格的な日本の味を8種類提供している。最大の特徴はスープに「糀」を使っていること。使用する米糀はバッタンバンの米を原料に、自ら手間と愛情をかけ作っている。あえてラーメンに糀を使うのは、将来的には米どころでありながら米糀の文化がないバッタンバンに米糀の会社を作り、商品をプロデュースしたいと考えているからだという。自慢の和風スープに自家製醤油糀のタレを合わせた看板メニュー「旨みラーメン」をはじめ、ラーメンの評価は上々だが、食材にもこだわるため価格は1杯8ドル程度と日本並み。客は現地在住の西洋人かビジネスで立ち寄る日本人ばかりで、カンボジアではまだまだ受け入れられていないのが現実だ。
 小学校の教員だった両親のもとで生まれ育った土茂さん。大学の語学研修で訪れたオーストラリアが気に入り、卒業後は現地で8年間、イタリアンやフレンチ、中華など様々な飲食店で雇われの料理人として働いていた。そんな中、勤めていた有名日本料理店である出来事に遭遇。常々どんなジャンルの料理でも作れる反面、強みがないとコンプレックスを感じていた土茂さんは、これを機に、日本が誇る食文化「糀」を武器に勝負しようと一念発起する。そして妻の安佑美さん(34)と共に糀作りを研究し、間借り店舗で糀を使ったラーメン店をオープン。またたく間に大人気となるが、物価の高さなどからラーメンを手軽な価格で提供できないことがわかり、オーストラリアでの独立を断念する。こうして日本へ戻ろうとした途中、新婚旅行代わりにたまたま訪れたのがカンボジア。バッタンバンの大地に広がる田んぼの光景に圧倒され、未知なる可能性を感じた2人は数日で移住を決めてしまったという。親からの資金援助もあり、力を合わせた夫婦はわずか3カ月でラーメン店を開業。カンボジア人の従業員を雇い、育成にも力を注いでいる。
 夫婦で見つけた可能性を信じ、日本の食文化をひっさげこの地にやってきて1年。今では新しい家族も増えた。長年、飲食店を転々とし両親を心配させたという土茂さんは「やりたいことをやらせてもらってたのは、親の理解があったから。あとは結果を出せるように頑張りたい」と感謝を口にする。42歳にしてようやく一国一城の主となり、さらなる挑戦を続ける息子へ、両親の想いが届く。