今回の配達先は、アフリカ大陸の東に位置するウガンダ。空手の師範として奮闘する石原藤彦さん(50)へ、日本に住む長男・藤弥さん(23)、二男・達樹さん(22)、三男・凌さん(20)、四男・大地さん(16)の思いを届ける。達樹さんが暮らす奈良の寮に集まった4人。かつて藤弥さんはウガンダに8年、一番下の大地さんは13年在留していたという。今は離れて暮らす父や家族について「日本に戻ってからは会っていないので、家族全員でずっと集まっていない状態は寂しい」と話す藤弥さん。凌さんは「僕らもかかったことがあるんですが、マラリアが心配。父ももう50歳なので安全にしていないと…」と気がかりを明かす。
長年、世界最貧国といわれていたウガンダは、近年になり経済が急激に成長。一方で犯罪が急増し、深刻な社会問題となっている。藤彦さんは首都・カンパラの郊外に道場を構え、身体に直接打撃を当てる「極真空手」を指導。道場に通う弟子は15人ほどで、30代40代の安定した職業についている人たちが護身術として習いに来ている。ひとまわりも大きな体格の弟子たちを相手に稽古をつける藤彦さん。技だけではなく内面も磨くべく尊敬と感謝、忍耐といった空手の精神も伝える。
13歳で空手に出合った藤彦さんは、日本一を目指して稽古に打ち込んできた。しかし大会に何度出ても上位に食い込めず、負けたショックや疲れから25歳の時に突然気持ちの糸が切れてしまったという。自分に嫌気がさし、空手から逃げ人生を模索する中、知人から誘われボランティアでアフリカへ。そこで、治安の悪い町で貧困にあえぐ人々の姿を目の当たりにする。「この本当に危険なところで空手が護身術になれば、私が教えることによって生き延びられれば…」と熱い思いが湧き、空手への情熱をウガンダで取り戻した藤彦さん。こうして16年前、妻と幼い4人の息子を連れて海を渡ったのだった。何もないところからスタートした生活は、空手の稽古も草むらでするような状況で、家族には満足したものを食べさせられなかったことも。そこで道場を運営するため、2008年にNGOを設立。日本の支援者を募って、ようやく2年前に道場建設へとこぎつけた。現在、息子たちは日本の高校への進学を機に帰国していき、妻の悦子さん(45)と現地で生まれた末娘の真実ちゃん(11)の3人暮らし。空手の収入はまだまだ十分ではなく、治安も悪いため日々の苦労は絶えないが、最近になって地道に諦めず指導した結果が少しずつ花開いてきた。愛弟子の1人が空手の世界大会の出場権を勝ち取ったのだ。これはウガンダ初の快挙。藤彦さんも出場を果たせなかった、空手家の夢の舞台に挑む。
今年で50歳となり、この地にやってきた時に比べると身体の衰えを感じるという藤彦さん。それでも厳しい環境の中、空手を通して人々の命と心を救いたいと戦い続ける父へ、日本で離れて暮らす4人の息子の思いが届く。