今回の配達先は、アメリカ・ニューヨーク。パーカッショニストとして活躍する小川慶太さん(36)へ、長崎に住む母・富貴子さん(59)の思いを届ける。
慶太さんは、2017年に所属するジャズバンド「Snarky Puppy」の一員としてグラミー賞を受賞。世界中から多様なジャンルの音楽家が集まるニューヨークでも、トップクラスの日本人パーカッショニストだ。ブルックリンにある自宅の部屋には、バンドのツアーなど旅先で買い集めた世界各地の珍しい楽器が所狭しと並んでいる。さらに花瓶やペットボトルのフタなど、身の回りの物で楽器を自作することも。気になるものがあればひたすら撫でたり叩いたりして音を確かめるといい、「パーカッションはどの国の音楽にも何かしらの形で存在する。終わらない旅のようで、ゴールはない」と、音のオリジナリティーを日々追求する。様々な打楽器に精通するだけでなく、彼ならではのスタイルが評判を呼ぶ慶太さんには、世界のトッププレイヤーからも共演のオファーが届く。ある時は、10年来の音楽仲間でビブラフォン奏者のクリスチャンさんから依頼されたライブのリハーサルのため、マンハッタンのスタジオへ。ニューヨークでもトップクラスのメンバーが演奏を合わせる中、慶太さんは全体のリズムの中でどの楽器をどう使うかイメージを膨らませ、アレンジを考える。クリスチャンさんも「慶太がアンサンブルにもたらす色・質感・音・リズムはとても良く考えられている。それがとても特別だから、慶太は最高のメンバーと演奏をするんだ」と信頼を寄せる。
国内外に及ぶライブツアーでは長期間家を空けることも多く、ニューヨークにいるときは妻と2歳の息子と囲む食卓が何よりも楽しみだという。自身は小さい頃に両親が離婚し、親と過ごす時間がほとんどなかった。女手一つで育てるため母は昼夜働き詰めになり、小学生の時から弟と2人きりで夜を過ごしていた中で出合ったのが音楽。テレビで見たジャズドラムに衝撃を受け、中学でバンドを結成しどんどんのめり込んでいった。こうして音楽で生きる道に憧れながら過ごしていた高校時代に大きな転機が…。慶太さんは、母の思いに報いるためにも自分の夢と真剣に向き合うことを決意。そしてアメリカの名門・バークリー音楽大学へ入学を果たしたのだった。母の富貴子さんは「私のわがままで離婚したので、子どもには負担を掛けられない。将来、大学に行きたいといったときにやれない親にはなりたくなかった」と必死に働いた当時を回想。「バークリーに行くと決めてからの慶太は生活が全然変わった」と明かし、「やっぱり行ってよかった」と安堵する。
アメリカに渡って14年、寂しかった子どもの頃を支えてくれた音楽と向き合い、今や世界を舞台に活躍する慶太さん。そんな息子の夢をずっと応援し続ける母が届ける想いとは。