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#5207月7日(日)10:25~放送
エクアドル

 今回の届け先は、南米・エクアドル。世界屈指のカカオ生産地で、カカオ豆の輸出業を営む高橋力さん(43)へ、栃木に住む父・高雄さん(70)と母・千寿子さん(64)、姉・紀子さん(44)の思いを届ける。
 カカオ豆とは、南半球の熱帯地域が原産のカカオの木に実る果実・カカオポッドの種のこと。元々は白い果肉に包まれているカカオ豆を発酵、乾燥、焙煎して細かくすりつぶしたものがチョコレートの原型となる。カカオは香りや味で分類され、現在世界で生産される主な品種は3種類。だが、いまだ発見されていない品種が数多く存在するという。力さんはそんな“神秘の植物”に惚れ込み、首都・キトでカカオの事業を立ち上げた。まだ見ぬ品種を探し求めて、月の半分はエクアドル中を駆け巡っている。新種のカカオがあると聞きつけると車で6時間かけて現場に赴き、人が踏み込まないようなアマゾンのジャングルに分け入ることも。しかも見つかる保証はなく、幻の品種に出合えるのはごく稀なこと。会社を立ち上げておよそ2年、経営は今もギリギリだという。
 栃木の那須高原で酪農家の長男として生まれた力さんは大学卒業後、家業を継ぐべきか迷った末に2年間海外への放浪の旅に出た。そこで日本にはない様々な形の農業を目の当たりにして「酪農の可能性に賭けてみたい」と実家に戻る。力さんは旧態依然とした自宅の酪農場を変えたいと、人工授精師の資格を取得して積極的に牛の繁殖を行い、牛乳の出荷量を2倍近くアップさせることに成功するが、共に働く父とはことごとく意見が食い違い言い争う日々。結局、新たな農業にチャレンジしようと、2008年に妻の父親が運営するバナナ農園があるエクアドルに渡り、そしてこの地で無限の可能性を秘めたカカオに出合ったのだった。現在ではカカオ豆の輸出だけでなく、力さんが厳選したカカオ豆を使ったチョコレートの製造も行う。「世界に出しても遜色のない、非常にクオリティーの高いものになっている」と胸を張るオリジナルのチョコレートは、日本の多くのパティシエにも認められ始めているという。
 カカオを追い求めエクアドル中を旅するうちに、力さんは自分のカカオ農園を作って栽培からチョコレートの製造までをすべて自らの手で行うという夢を見つけた。まずは候補地の土壌がカカオ栽培に適しているかを3年かけて調べ、いずれは東京ドーム4個分にもなる土地にこれまでに見つけた品種を植えたいという。一方で、実家の酪農場の将来については、父と話し合うも口論になり物別れに終わったまま。姉の紀子さんは「跡取りがいなくなったので、今まで築き上げてきたものを手放さないといけなくなるのか…と、口では言わないけれど複雑な思いがあったんじゃないか」と父の気持ちを代弁する。また、父の高雄さんも「将来的にはここに住んでもらいたい。そうでない限りは、なかなか管理できないから」と胸の内を明かす。
 「カカオ農園を作る」という大きな夢を結実させるため、長く険しい道を切り拓いて進む息子の元へ、両親が届ける想いとは。