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#5145月26日(日)10:25~放送
マーシャル諸島共和国

 今回の配達先はマーシャル諸島共和国。劣悪な教育環境の中、現地に学校を作るという夢を追う教師の進藤純子さん(34)へ、山口に住む父・佳一さん(63)、母・則子さん(62)の思いを届ける。
 太平洋に浮かぶ1000以上の島からなるマーシャル諸島は、人口およそ5万人。その半分が暮らすマジュロ島の都心部から車で1時間、純子さんは島の一番端にあるローラ村の高校で数学の授業を受け持っている。マーシャル語の教材が存在しないため生徒たちは基礎学力を身につけることが難しく、高校3年生でも簡単な割り算が計算機無しでは解けない生徒がいるほど。純子さんは日本から小学校低学年用の計算ドリルを持ち込むなど工夫を凝らしているが、学習意欲が低い子も多く、遅刻や無断欠席は当たり前。生徒の半数が卒業までに中退してしまうという。背景には第二次大戦後の悲惨な歴史から来る国の貧しい経済状況があり、失業率は30%以上にも。子どもたちが意欲を持って学べる環境ではないと純子さんは感じている。
 純子さん自身は、小学生の時にはいくつもの習い事をこなすような優等生だったが、中学に入ると親や周囲の大人も手をつけられないほどの非行を繰り返すようになり、夢も希望も持てない生活をおくっていたという。当時について母の則子さんは、「注意をしても『どうして私を信じてくれないんだ』みたいな態度で、親としても悩んでいた」と明かす。また父の佳一さんは、純子さんが入学した高校で教師をしており、手を焼いたこともあったと語る。しかし、両親だけでなく自分自身も苦しめるほど荒れた毎日の中で、純子さんは「“楽しい学校”“行きたい学校”を作りたい」と思うように。その気持ちは次第に「途上国に学校を作る」という夢になり、実現のため青年海外協力隊に応募。2013年に初めてマーシャルへ赴任する。
 マーシャルで生きると決めた大きなきっかけになったのは、現地に来て最初に勤めた小学校での出会いだった。今は亡き校長先生は、教育熱心な教師が少ないマーシャルで常に子どもたちや学校のことを考えていたという。そんな尊敬すべき人物との別れを経て、2017年に純子さんは校長先生の夢であった図書館を小学校の中にオープン。物置だった部屋を改装し、ペンキ塗りから棚作りまで全て自分たちの手で行った。子どもたちが学ぶためには、まず場所作りから始めなければいけないマーシャル。さらに1年以上をかけて一軒家を建てた純子さんは、最小限の居住スペース以外は間取りのほとんどをライブラリーのスペースにあてた。現在は子どもたちが遊びに来たり、意欲のある高校の生徒に補講を行うこの場所を、ゆくゆくは幼稚園から高等教育を行う一貫教育校とし、国際社会で活躍できる人材を育てるのが純子さんの最終的な目標だ。そんな無謀とも思える挑戦の裏には、今まで何も言わずずっと自分を信じてくれた両親への思いがあった。
 マーシャルに来て6年。かつてはマイナスに向いていたエネルギーが、今では夢へと突き進む原動力になっている純子さん。現地の子どもたちに寄り添い、「学ぶ」という文化の種を植え続けるべく果てしない道のりの第一歩を踏み出した娘へ、両親の想いが届く。