今回の配達先はアフリカのルワンダ。日本食レストランを営む山田美緒さん(36)へ、大阪に住む父・龍彦さん(67)、母・幸子さん(65)の思いを届ける。
かつての民族間紛争から劇的な復興を遂げ経済成長を続けるルワンダは、現在ではアフリカの中で最も治安がいいといわれる国。美緒さんがオーナーを務める日本食レストラン「キセキ」は、街の中心から車で10分ほどの高台にあり、学校給食とランチビュッフェを提供している。ランチでは天ぷらや寿司、お好み焼きなど20種類のメニューを用意。日本人がオーナーの日本食レストランはルワンダではここだけとあって、地元の富裕層や旅行客を中心に1日30人程が来店。豆腐は大豆から手作りし、出汁は日本から輸入した鰹節や昆布から取るなどメニューにはこだわりを持ち、自家製のソースを使ったお好み焼きがルワンダ人に好評なのだそう。店のスタッフは、ほとんどが10代から50代のシングルマザー。美緒さんがメニューとレシピを作成して、彼女たちを叱咤激励しながら切り盛りしている。当初は腕の良いシェフや英語が堪能なウェイターを雇っていたが、お金を盗まれるなど数々の裏切り行為が発覚。心が折れそうになっていた美緒さんを支えてくれたのがシングルマザーのスタッフで、それ以来、地域のシングルマザーを優先的に雇用するように。スラムに暮らし8人の子どもと孫を育てる51歳の最年長スタッフは「美緒はとても心が広くて優しい人。私たちシングルマザーに光る道を与えてくれた」と感謝する。
美緒さんの人生に大きな影響を与えているのは、大学時代に行ったアフリカへの一人旅。日本人女性で初となる自転車でのアフリカ大陸縦断に挑戦したのだ。母からは「足の骨を折ってでも行かせたくない」と猛反対されたが、自転車店に弟子入りして修理技術を学び、自治体や企業に企画を売り込みスポンサーを集めて資金を調達するなど準備を進めた。そしてケニアから南アフリカまで約半年で5000キロを走破した美緒さんは、夢を実現する自信を手にする旅の中で、現地の人々に怪我の手当てをしてもらったり泊るところを提供してもらったりと、そのパワーと優しさに魅了されたのだった。
3年前、美緒さんは幼い子どもを連れて一家でルワンダへ移住した。ここでも母からは「子どものことを考えなさい」と反対されたが、「決めたことだからごちゃごちゃ言わないでほしい」と突っぱね、以来そのことについて話すことはなかったという。母の幸子さんは「反対するも何も、いつも決めてから言われるので反対のしようがない」と苦笑い。「小さい頃から上に立ってやろうとする子だった。小・中学校でも、生徒会長になってみんなの助けを得てやるという感じだったので、今もそうなのかな」と話す。
現在は信頼できるスタッフに囲まれ、ようやくレストランも軌道に乗ってきた。さらに、シングルマザーたちとの新たなビジネスも考え行動を始めている。「店を、地域に暮らすお母さんに任せられるレベルに仕上げて、私の帰ってくるホームとして店を続けながら、他の国にも拠点となるホームをあちこちに作れたら」と将来の構想を描く美緒さん。ずっと自分の思う道を突き進んできた娘へ、これまで語られることのなかった母の想いが届く。