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#5084月7日(日)10:25~放送
アメリカ・ニューオーリンズ

 今回の配達先はアメリカ。ジャズのトロンボーン奏者として奮闘する菊池ハルカさん(32)へ、千葉に住む母・ゆみ子さん(57)、妹・琴子さん(29)の思いを届ける。
 20世紀初頭にジャズが発祥した地として今も世界中から音楽好きが集まるニューオーリンズ。特にフレンチクオーターと呼ばれるエリアにはおよそ50軒ものライブハウスがひしめき、365日休むことなくライブ演奏が行われている。そんなジャズの聖地で、バンドのメンバーからも「体が小さいのにトロンボーン独特の力強く大きな音が出せて、しかもどんな音楽にも対応してくれる」と絶賛されるハルカさんは、現在5つのバンドを掛け持ちしている。そのうちの1つである「チャーワー」というバンドは今年、音楽界最高峰の栄誉であるグラミー賞にノミネートされた。夜から始まるライブは、いくつものステージをこなすと帰宅は深夜3時になることも。連日多忙を極めるが、実はハルカさんは2カ月前に第一子を出産したばかり。しかし仕事を休むと、ここまで築いてきた信頼関係がくずれてしまうという不安から、出産後すぐにライブ活動に復帰していたのだった。
 ハルカさんの音楽活動のスタートは4歳の時。母の勧めで始めたピアノだった。小学校になり、トランペットが吹きたいと金管楽器のクラブに入部するも、人手が足りなかったトロンボーンの担当に回されてしまう。こうして不本意ながら始めた楽器だったが、高校でジャズを演奏する先輩に出会ったことからトロンボーンとジャズの魅力に目覚め、東京藝術大学の音楽学部に進学。卒業後プロとして活動を重ねるうちに、次第に聖地・ニューオーリンズで演奏したい気持ちが抑えきれなくなり、26歳で海を渡った。決まった演奏先もなく、ただ好きだという思いひとつでやってきたハルカさんは、連日ライブハウスを訪れては、「演奏させてほしい」と交渉。飛び入りで出演して実力をアピールし、自らの音で道を切り拓いてきた。
 現在は演奏活動とともに、昨年結婚したジャズピアニストの夫・佳孝さん(40)と協力し合って子どもの世話をしている。だが2人ともライブがある時はベビーシッターを頼んで、その度に後ろ髪を引かれる思いでライブハウスへと向かう。ハルカさんは、「お客さんやメンバーにとっては、私がお母さんだからというのは関係ない」とプロの顔を見せる一方、初心者である“お母さん業”とのバランスに悩みながら頑張っているという。そんな今のハルカさんを見た母のゆみ子さんは、ライブでの娘の活躍ぶりに目を見張りながらも、「頑張っているのはわかるけど、今はまだ気が張っている感じがする。体調を崩さなければいいけれど…」と心配する。異国での初めての出産を経て、育児と音楽活動、どちらも大切だからこそ両立に悩み狭間で揺れ動く娘へ、母が届ける想いとは。