今回の配達先はアメリカ。プロバスケットボールの最高峰・NBAのダンサーとして奮闘する寺田智美さん(30)へ、埼玉に住む父・和夫さん(64)、母・洋子さん(65)、姉・優美さん(39)の思いを届ける。
オハイオ州第二の都市・クリーブランドは、メジャーリーグやアメリカンフットボールのチームも本拠地を置くスポーツが盛んな街。中でもNBAの「クリーブランド・キャバリアーズ」は地元が誇る大人気のチームで、智美さんはチアリーダー「キャバリアガールズ」で活動している。平均年齢25歳、19人のチームで最年長の智美さんはダンス能力を買われメンバーをまとめる存在だ。
高校でチアダンス部に入り、大学から本格的にチア活動を開始した智美さんは、卒業後大手損保会社に入社。OLとして働きながら、アメフトの社会人チームのチアリーダーとして活躍する。そして30歳を前に引退するつもりでいたが、最後の思い出作りのつもりで受けたNBAダンサーのオーディションにまさかの合格。心に火がついた智美さんは、安定した職を投げ打ち本場で生きて行こうと決心する。両親の猛反対を押し切り渡米した1年目、決意とは裏腹に思いもよらない出来事が起こる。最初に在籍していたチームが何の通知もなく突然解散し、所属チームがなくなってしまったのだ。動揺しながらも諦めたくない一心の智美さんは、これが最後と覚悟を決めキャバリアガールズのオーディションに挑戦。合格し、再び夢を繋いだのだった。ダンスのパフォーマンスは毎試合変わるため、その度に違う振り付けをマスターし、1日6時間以上にもなるハードな練習をこなす。それでもNBAダンサーは毎年オーディションでメンバーを入れ替えるため、契約がいつ打ち切られてもおかしくない厳しい世界。信用を獲得するためにも毎試合気を抜くことはできないのだ。
試合当日。キャバリアーズのホームアリーナには大勢のファンが詰めかけ、智美さんは2万人の大観衆の目が一斉に注がれる中、選ばれた者だけしか立てない世界最高峰のステージへと飛び出す。日本では味わうことができなかった本場・アメリカの熱気。智美さんは昨年、この感動を感じて欲しいと日本の家族をアメリカに招待した。身体が不自由で外に出ることに消極的だった姉の優美さんも来てくれたという。観戦を機に気持ちに変化が生まれた優美さんは「『智美が頑張っているから私も』と、お互い通じていると思う」と姉妹の絆を語る。
日本を離れて2年。最近では人気のフィットネスジムでインストラクターの仕事も始めた智美さん。先のことはまだ決めていないと言うが、いずれはアメリカで学んだことを日本のスポーツエンターテインメントに繋げられたらと思っている。一度はチアリーダーから身を引こうと考えていたものの本場の空気を肌で感じ、ダンスの世界で新たな道を切り拓こうとしている娘へ、心配しながらも温かく見守る日本の家族が届ける想いとは。