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#5022月17日(日)10:25~放送
アメリカ・ボストン

 今回の配達先はアメリカ・ボストン。パイプオルガン奏者として活動するマロイ菜摘さん(44)へ、大阪に住む父・哲朗さん(70)、母・正子さん(68)の思いを届ける。「日本ではエレクトーンやピアノをしていたので、実際にパイプオルガンを弾いているところは見たことがない」と言う正子さん。一方、哲朗さんは「子どもと2人きりなので何かあると心配」と、菜摘さんと一人娘の様子を気に掛ける。
 東海岸に位置する大都市・ボストンは歴史が古く、数多くの教会が当時の姿を今に留めている街。菜摘さんは教会で行われる礼拝で、式の進行に合わせてパイプオルガンを演奏している。キリスト教徒にとって礼拝は神と対話する時間であり、菜摘さんの音色はそんな特別な時間を彩るもの。パイプオルガンは建物と一体になっており、楽器という存在を超えた宗教空間の一部なのだ。オルガンの形式は教会によって様々で、流派に合わせた演奏スタイルが求められるという。そんなパイプオルガンを弾く菜摘さんの傍らには、一人娘の璃瑠さんの姿が。譜面を見ながら適切なタイミングでレバーを操作し音色を変えるなど慣れた様子で母の手助けをする。14歳になる璃瑠さんは、シングルマザーの菜摘さんにとってもはや演奏だけでなく様々な場面で頼れる存在になっているという。
 菜摘さんは4人家族の長女として生まれ、5歳からピアノを習い始めた。音大を卒業後、いったんは就職するも旅行で訪れたボストンを気に入り、26歳で名門・バークレー音楽大学に入学。その後現地で知り合った男性と結婚し、璃瑠さんを出産。璃瑠さんが8歳のときに離婚し、以来女手一つで娘を育ててきた。教会の仕事を始めたのは璃瑠さんが9か月の頃で、パイプオルガンに触れたのはその時が初めてだったという。かつては音楽家を志した菜摘さんだったが、今ではかけがえのない璃瑠さんの存在が人生の大部分を占めるようになった。娘と過ごす時間を最優先とするため、自由にできる時間がとりやすい教会のオルガニストを続けている。
 ある日、ボストンから車で1時間半ほどの場所にある大きな教会を訪れた菜摘さん。この教会はヨーロッパの大聖堂をモデルに19世紀末着工、15年をかけて建造されたもので、フランスから輸入されたというパイプオルガンがある。この教会のオルガニストが菜摘さんの才能に惚れ込み、礼拝に合わせた演奏ではなく彼女自身の演奏を披露してほしいと、リサイタルを企画してくれるというのだ。教会もオルガンも普段の規模とはすべて桁違い。試し弾きした菜摘さんは、「慣れるのに時間がかかりそう」と言いつつも「こういうところで弾くのが一番弾き甲斐があるし、楽しい」と大聖堂に音色を響かせる。5歳からずっと音楽に打ち込んできた人生。今はシングルマザーとして娘の成長と向かい合いながら、演奏家として夢を心に秘めパイプオルガン奏者として腕を磨き続ける菜摘さんへ、日本の両親の想いが届く。