今回の配達先は、前回に引き続きフィリピンのセブ島。 “ぐっさん”こと山口智充が現地を訪ね、1年半前に番組で紹介した海上の遊牧民・バジャウ族として生きる唯一の日本人である松田大夢さん(23)へ、日本に住む父の思いを届ける。
中学生で反抗期を迎え、親元を離れ佐渡島の祖父母と暮らしていた大夢さん。みんなと同じことを要求される日本の社会や学校に馴染めず、遂には高校卒業3日前に中退し日本を飛び出す。東南アジアを放浪した末にたどりついたバジャウ族の村で、一目惚れしたシャイマさんと結婚。以来この村で暮らしている。元居た海を追われセブ島へたどり着いたという苦難の歴史を持つバジャウ族が自分を受け入れてくれた恩を返そうと、大夢さんは新たなビジネスの立ち上げに奮闘。仲間とゲストハウスを建て、この地に観光客を呼び寄せ村に雇用を生み出そうと考えている。
セブ島随一の繁華街・セブシティから海沿いの少し先にあるバジャウ族の村にやってきたぐっさんは、大夢さんの案内で建設中のゲストハウスへ向かう。しかし、海の上に住居が所狭しと並ぶ集落は入り組んでいるうえに、行き来するためにかけられた橋は不安定な細い板で、隙間だらけ。やっとの思いでたどり着いた村の端、海が見える場所に建つゲストハウスは、一緒に食事を作ったりしながらバジャウでの生活を体験してもらいたいとの思いもあって、大夢さんの住居も兼ねているという。屋内を案内してもらっていると、リビングには妻のシャイマさんが。そしてその傍らには赤ちゃんの姿が!昨年3月、息子の星くんが誕生し、夫婦で子育てにも奮闘中なのだ。
大夢さんがゲストハウスとともに手掛けているのが、バジャウ族と行く離島ツアー。最近日本からの問い合わせも増えているという。多い時には月に10日以上も出る人気のツアーへ、ぐっさんも連れて行ってもらうことに。セブ島を出発して2時間半、白い砂浜だけの小さな島に到着。上陸したぐっさんは「すごくいいところ!気持ちいい!」と思わず歓喜の声をあげる。干潮の時にしか現れない幻のような島は、漁をしていて偶然見つけた場所で名前もないという。ここでバーベキューを楽しみながらのんびりと過ごすというのが、バジャウ族とともに作り上げた他では体験できないツアー。こうした大夢さんの奮闘によって、バジャウの人たちの生活環境も少しずつ向上してきたという。
ゲストハウスに戻ると、大夢さんからぐっさんへお願いが。ゲストハウスの顔となる旗を、村の子どもたちと一緒に作ってほしいという。快く引き受けるぐっさん。さらに看板も手作りし、“バジャウ”の文字とともに太陽の絵をデザインし、「すべてのバジャウの人に太陽が照り続けますように。情熱あふれるゲストハウスであってほしい」との願いを込める。
大夢さんが日本を離れ、村に来て4年。バジャウの人が家族を大切にする姿や、自分自身も家族を持ったことで、これまで疎遠だった両親への思いにも徐々に変化が出てきたという。一方、父の新さん(51)は、長距離トラックのドライバーとして家族を養ってきたが、「家を空けることが多かったので、父親らしいことはしてあげられなかった」と悔やみながらも、「“大夢”という名前のごとく生きていると思う」と目を細める。
そんな日本の両親から預かった届け物を、ぐっさんが大夢さんへ手渡す。自分の思う道を突き進んできた息子へ父が今、伝える想いとは。