世界一のエンターテインメントの街、アメリカ・ロサンゼルスで駆け出しの女優として奮闘する藤井美穂さん(24)と、三重県に住む母・晴美さん(60)をつなぐ。美穂さんは日本の大学で演劇を学んだ後、3年前にロスの演劇学校に留学。今年の1月に卒業し、ハリウッドで女優活動のスタートを切った。毎日欠かさず行うのはオーディションのエントリー。パソコンに向かって1日に100件ものオーディションにエントリーするが、実際に参加通知が来るのは多くて週に5件ほど。「その中で勝っていくには“出る杭”じゃないと認めてもらえない」という美穂さんは、成功を目指してあらゆる仕事にチャレンジする。ある日は美穂さんが脚本・演出・主演をつとめるショートムービーの撮影。自主映画をインターネットやフィルムフェスティバルで発表することにより、大きなプロジェクトに発展する可能性があるという。撮影が終わると、すぐさま向かったのは街のコメディクラブ。ハリウッドスターにはスタンダップコメディ出身者も多い。美穂さんもチャンスを狙いながら、客の前に立って話術やステージでの見せ方に磨きをかける。さらに、美穂さんはモデル業にも挑戦。「プラスサイズモデル」と呼ばれるぽっちゃり系の服のモデルとなり、自らカメラマンを手配してインスタグラムで発表している。今やフォロワーは6万人を越え、人気に目を付けた全米各地のアパレルメーカーから服が送られてくるほど。そして、ハリウッドで活躍する日本人俳優・神田瀧夢さんが指導するレッスンでも、「インプロビゼーション」と呼ばれるアドリブ演技のトレーニングを受ける。何にでも体当たりで挑む美穂さんのガッツは、瀧夢さんも認めるところだ。
母親には少し遠慮してしまうという美穂さん。その理由は中学時代、いじめに遭い不登校になった時の母・晴美さんとの関係にあった。当時は反抗期でもあり、母に激しく感情をぶつけ、晴美さんも「当時はすごく大変だった」と振り返る。どん底の時、美穂さんは演劇と出会った。晴美さんは生き生きとする美穂さんの姿を見て、東京への進学もアメリカへの留学も黙って許したのだった。
日々がむしゃらに行動する美穂さんだが、実は今、大きな問題に直面していた。現在所持するビザの期限があとわずか半年となったのだ。ビザが切れるまでに実績を積んで、長期で働くことが可能な「アーティストビザ」を取得しなければハリウッドで女優を続けることができなくなってしまう。卓越した能力を持つ人に与えられるこのビザをもらうには、とにかく結果を残すしか道はない。そんな中、美穂さんに大きな作品のオーディションを受けるチャンスが訪れる。軍隊を舞台にしたコメディドラマの女性兵士役に挑む美穂さん。しかしオーディション中、急きょアドリブで芝居をするよう指示が出る…。崖っぷちに立ちながらも夢をひたむきに追いかけ続ける美穂さんをずっと見守っていた母が、娘への届け物に込めた思いとは。