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#44611月26日(日)10:25~放送
マレーシア

 今回の配達先はマレーシア。絵本作家のちゅあのりこさん(40)と、兵庫県に住む父・哲則さん(73)、母・美佐子さん(68)、妹・園子さん(39)をつなぐ。マレーシアで現地の男性と結婚し、出産を機に一度日本に帰国。2年前に再渡航し、現在絵本作家として活動しているのりこさん。母は「ずっと日本に居てくれると思っていたんですが…。今でも日本に戻ってきてほしいけど、たぶんもうそれは望めないと思う」と切ない思いを明かす。
 マレーシアで、花農家を営む夫のトゥクさん(34)、7歳の長男、3歳の長女、1歳の次男と暮らすのりこさん。夫は仕事が多忙で休みがないため、育児と家事はすべて彼女が担当している。 パソコンを使って絵本のための絵を描くのは、家族がまだ寝ている早朝。自宅の一角の小さなスペースが彼女のアトリエだ。今は、戦士の男の子が戦いを経て、友情の大切さに気づく新作を制作中だという。
 のりこさんが手掛けた1作目のタイトルは「てんごくにとどくケーキ」。のりこさん自身の亡くなった祖母への思いを込めた作品で、主人公の男の子は長男がモデルだという。この作品は初版1500部が完売。海外からも注目を浴び、韓国やフィリピンでも出版された。
 のりこさんは23歳の時、日本語講師の出向社員としてマレーシアへ。だが、その仕事に満足することができず、昔から好きだった絵の勉強をするため、現地のアートスクールに入学。その時に出会ったご主人と結婚し、長男を授かった。だが、初めての妊娠でマタニティーブルーになり、急きょ帰国して日本で長男を出産。その後、ある思いに突き動かされて描き上げたのが「てんごくにとどくケーキ」だった。
 「昔から絵を描くのは好きでしたが、形に残したいと思ったのは、子供が生まれてから。この子たちに生を与えたわけですから、この世界を生きていくための大事なことを教えたかった。どうやって伝えたらいいかと考えた時に、自分の好きな絵本で伝えられたら一番いいと思って…」と、のりこさん。そんな思いで作った絵本が、たまたま日本に遊びに来ていたアートスクール時代の恩師の目に留まってマレーシアで出版されることになり、絵本作家としてデビューを果たしたのだ。その後も絵本作家として活動を続けていたが、2年前、ご主人が家業の花農家を継ぐことになり、一家は急きょマレーシアに戻ることに。その頃から体調を崩しがちだった父のこともあり、年老いた両親を残して日本を離れなければならなかったのは、今も心残りだという。
 マレーシアに戻って2年。「まだ恩返しはできていない。両親にも絵本を日本語で読んでほしいので、日本でも出版できれば」と、のりこさんは新たな夢に向かって動き出している。そんなのりこさんに日本の両親から届けられたのは、彼女が小学校2年生の時に描いていた絵日記。仕事で忙しかった父が、どんなに帰りが遅くなっても毎日細やかなメッセージを残してくれた交換日記だ。のりこさんは「とても思い出に残っている。最近は父の体のこともあって…魔法が使えたら父の時間を巻き戻してあげたい。でも魔法は使えないから、今自分に何ができるか、考えているところです」と言って、涙をこぼすのだった。