今回の配達先はスコットランド。サーカスアーティストの浦和新さん(25)と、三重県に住む父・真佐夫さん(59)、母・礼子さん(57)をつなぐ。大学卒業後、カナダへ渡り、世界的に評価の高いサーカス団「シルク・エロワーズ」の一員となって世界中を巡業している新さん。父は「安定した職業に就いてほしかったので葛藤はある」と率直な思いを明かし、母は「一人っ子なので昔から人見知りだった。ちゃんと皆さんと一緒に仕事ができているのか…」と心配している。
2本のスティックの間に張ったヒモの上でコマを回転させて、さまざまな技を繰り出す「ディアボロ」のスペシャリストである新さん。現在は、現代サーカスをリードする「シルク・エロワーズ」のパフォーマーとスタッフ、総勢17人で、ここスコットランド・エディンバラで1カ月間の公演中だ。ショーは約90分。架空の街を舞台に、ルールに縛られて生きる男が自由への道を見つけていく物語で、パフォーマーがどんどん入れ替わり、世界観を演出していく。新さんは、高い技術と美しさを追求した世界トップクラスのディアボロの技で観客を魅了。ショー全体が10の演目で構成されており、ディアボロ以外にも、演劇、ダンス、アクロバットもこなす新さんは、そのほとんどに出演している。
5歳の時に見たジャグリングに興味を持ち、中でもディアボロの虜になったという新さん。高校生の時、YouTubeに投稿した動画が話題となり、その世界では有名になっていた。19歳の時にジャグリング大会で日本一となり、大学卒業後、500人中10人しか受からないというカナダの国立サーカス学校に見事合格。特待生としてジャグリング以外のサーカスのノウハウも学び、去年、卒業と当時に「シルク・エロワーズ」に誘われた。超名門サーカス学校の卒業生や、厳しいオーディションを勝ち抜いたメンバーで構成されるシルク・エロワーズの一員になれたことは、新さんにとって誇りだという。
だが、両親は安定した仕事に就くことを望んでいた。特に、子供のころから厳しかった父には反発心もあったという。「何をするにも父の目を気にしていた。でもやりたいと言ったことは、意味のあることであればやらせてくれた。今思えば本当にちゃんと育ててくれたんだなと思う」と、新さんは改めて両親に感謝する。
人の心に強く残る、唯一無二のパフォーマーを目指し、一切の妥協を許さず、ストイックに技を磨き続ける新さん。日本の両親から届けられたのは、中学生の時に家庭科の授業で作った三角巾。先生から何を書いてもいいと言われて三角巾に書いたのが、当時心から憧れていたジャグリングの世界大会「WJF(世界ジャグリング連盟)」と「IJA(国際ジャグラー協会)」の文字で、新さんは「僕の殻を壊してくれたもの」と懐かしむ。そして、父からの手紙には「我が息子ながら、その粘り強さとバイタリティーは一級品と認めましょう」と綴られ、整形外科医の立場から「サーカスは怪我や故障と隣り合わせの仕事。事故のないように頑張ってください」と、心配する言葉が添えられていた。新さんは父に認めてもらえたことに「僕は幸せ」と喜び、「ぜひ一度見に来てほしい。ケガや故障など気にならなくなるぐらい面白いから!」と、両親に呼びかけるのだった。