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#4204月30日(日)10:25~放送
アメリカ・イリノイ州

今回の配達先はアメリカ・イリノイ州。ドラム缶から作られた世界でも珍しい楽器・スティールパンの音色に魅せられ、その指導者・演奏者として生きる浅田優子さん(39)と、埼玉県に住む父・良一さん(72)、母・愛子さん(68)をつなぐ。優子さんの師匠でもある夫のクリフさんは今年80歳。父は「私より年上で、最初聞いたときは驚いた。どんな暮らしをしているのか…」と、娘を心配している。
 優子さんが勤務するのはノーザンイリノイ大学。教えているのは、ドラム缶の底をドーム状に凹ませて作られた打楽器・スティールパン。音域によってさまざまな種類があり、オーケストラのようにメロディーやリズムなどのパートに分かれ、複数で演奏する。彼女はその指導者であると同時に、自らのスティールパンバンドを率いて全米で演奏を行うプレーヤーとしても活動。さらには、スティールパンをすべて手作業で製作するビルダーでもあるのだ。
 この楽器が生まれたのはカリブ海に浮かぶ島国、トリニダード・トバゴ。植民地時代に楽器の演奏を禁じられていた人々が、代わりにドラム缶を叩いて音楽にしたのが始まりだという。そんな楽器の魅力を、優子さんは「ただのシンプルな鉄から生まれた楽器というのが素晴らしい」と称える。
 10歳の時、父の仕事で家族と共にアメリカに渡った優子さん。5年後、家族は帰国することになったが、優子さんは、周りに合わせる日本の風潮に馴染めないと、姉と2人でアメリカに残ることを決意。そんな娘の決断を両親は何も言わず許してくれたという。「アメリカでは自分が自分らしくいられたし、何の制限もなく自分を表現することができた」と当時の思いを明かす優子さん。「両親から“信頼しているから”と言われたのが心に深く残っている。両親はすごいと思う。もし自分に子供がいたとしても、たぶん心配でできなかったと思う」と言い、感謝する。
 その後、大学に進学したものの、やりたいことが見つからず、苦悩の日々を送ることに。そんな時、トリニダード・トバゴを訪れ、出会ったのがスティールパンだった。その美しい音色にのめり込んでいった優子さんは、さらに深く学ぶため、今の大学に移籍。そこで出会った運命の人が、スティールパンをアメリカに広めたといわれる巨匠で、大学で指導していたトリニダード・トバゴ出身のクリフさんだった。彼の人間性に強く惹かれて結婚を決意したという優子さん。「彼は80歳になってどんどん弱ってきているけど、できる限りそばにいて、自分ができることをやって行くつもりです」。ずっと優子さんを見守り、導いてくれた夫を、今度は自分が守っていきたいと言う。
 両親に対しては「自分が選んだ道を尊重してくれたからこそ今の自分がある」と感謝。一方、父は、41歳離れたクリフさんとの結婚について、「彼は人間として素晴らしい。ただ、年が倍も違うことには内心複雑だった。でも娘は15歳の時から一人で考え、判断し、決断してきた子。今さら我々が反対しても、どうなるものでもないな、と」と、葛藤があったことを打ち明ける。
 自らが救われ、共に生きてきたスティールパンの魅力をさらに広めたいと活動する優子さん。そんな彼女に日本の両親から届けられたのは1冊のアルバム。優子さんが生まれた時からの成長の記録が、両親の手書きの文章で綴られていた。共に暮らした15年間の思い出を、宝物のように大切にしてきた両親。「いつも一緒だよ」という2人からのメッセージに、優子さんは思わず涙するのだった。