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#4112月19日(日)10:25~放送
インドネシア・バンジャルマシン

 今回の配達先は敬虔なイスラム教徒が多いインドネシアのバンジャルマシン。この街でイスラム教徒の戒律に合わせた特殊なラーメンを提供する店を営む清家威一郎さん(38)と、兵庫県に住む母・太美子さん(61)、妹・沙来さん(31)をつなぐ。4年前にインドネシアへ渡ってから威一郎さんからはほとんど連絡がなく、どんな風に働いているのか全く分からないという母と妹。「メールで“婚約者ができた”という報告はあったが、国籍も年齢も全く知らない」と心配している。
 2年前にオープンした威一郎さんの店「ラーメン明石」で提供するのは、こだわり抜いた“ハラルラーメン”。イスラム教徒は豚や酒を使わない“ハラルフード”しか食べないため、スープは鶏ガラで取り、麺も自前で製麺、チャーシューは鶏のから揚げで代用するなど、試行錯誤を重ねて完成させたオリジナルだ。今や日本人が作るハラルフードとして評判を呼び、人気の店となっている。
 日本では飲食の会社の総括店長として、新規店舗の立ち上げを何軒も担当してきた威一郎さん。4年前、友人に「インドネシアで新たなラーメン店の立ち上げを手伝わないか」と誘われ、海を渡った。ところが「最初に立ち上げを任された店の待遇がとても悪くて。給料の未払いもあり、ボスが脱税か何かでガサ入れがあったりして不安でしょうがなかった」という。そんなトラブルに見舞われた威一郎さんに救いの手を差し伸べてくれたのが、当時店で働いていたスタッフで、威一郎さんと交際を始めたばかりのデフィさん(22)さんだった。彼女の一家が所有する空き物件で、一からラーメン店をやってみないかと提案してくれたのだ。威一郎さんは一念発起し、店の内装から水回りまでほとんどを自分で手作りして「ラーメン明石」をオープンさせたのだ。
 だが、裕福な華僑であるデフィさんの両親は、お金もなく、海のものとも山のものとも分からない日本人との結婚をまだ認めていない。3年以内に必ず店を成功させるとの約束で付き合い、何とか許してもらっている状態だ。約束の期限まであと1年。今はまだ儲けより生きていくだけで必死だが、長期的に安定した高い収入を見込める結果を出そうと、新たに屋台の展開に乗り出し、勝負に出ようとしているところだ。
 この国で必死に走り続けてきた4年間、威一郎さんは日本の家族とほとんど連絡を取っていない。そこには複雑な思いがあるからだった。「まだ結果が出せていない。インドネシアで一旗揚げると言って出てきた以上、給料未払いのトラブルなど言う事すら恥ずかしかった。心配をかけたくなかった」。離婚を経験し、威一郎さんと妹を女手一つで育ててくれた母。「仕事を掛け持ちして懸命に働きながら通信大学で学ぶ母の姿が記憶に焼き付いて、頭があがらない」という。
 そんな母から届けられたのは、手作りのアルバム。威一郎さんが日本を出てからの4年間の出来事が写真とメッセージで綴られていた。妹が結婚し、2人の子供ができ、母がおばあちゃんになったこと。そして母が起業したこと…。「頑張っとんなぁ」と嬉しそうにアルバムに見入る威一郎さん。最後のページには「お互いもっと連絡を取り合えるようになったらうれしい」「婚約者の方も今度紹介してください」と綴られていた。威一郎さんは「ありがたいですね。好きなように生きさせてもらって。心配かけていると思う。今年は結果を出すので、彼女を日本に連れて帰りたい」と母に約束するのだった。