今回の配達先はアメリカ・ニューオリンズ。アメリカプロフットボール・NFLのチーム「ニューオリンズ・セインツ」初の日本人チアリーダー・松崎美奈子さん(34)と、京都に住む父・一広さん(63)、母・和子さん(63)をつなぐ。日本での安定した職を投げ打ち、31歳で遅まきながら転身した美奈子さん。母は「まさかチアリーダーになるとは。辞めてほしいと言ったのですが…。早く日本に帰ってほしい」と願い、父は「今の年齢が限界じゃないか」と心配している。
2005年に起こった巨大ハリケーンで死者およそ1500名という甚大な被害をこうむったニューオリンズ。そんな街の復興のシンボルとなったのが「ニューオリンズ・セインツ」だ。美奈子さんたちチアリーダーはホームグラウンドで行われる試合の間中フィールドに立ち、ダンスを披露するなどチームを応援して選手とファンを盛り上げている。チアリーダーは現在31名。メンバーは毎年オーディションで選ばれ、美奈子さんは見事難関を勝ち抜いて選抜された。平均年齢24歳のチームの中で彼女が2番目の年長者になるという。
日本では8年間、トップアスリートをサポートする管理栄養士として働いていた。そんな彼女が31歳という年齢でNFLのチアリーダーを目指そうと決意したのは、日本のプロ野球チーム、オリックス・バファローズの管理栄養士を務めたのがきっかけだった。「選手たちを見て、夢を追っている集団なんだということを実感した。自分は夢を持つという経験をしたことがなかったので衝撃を受けました」。こんな自分が夢を追う彼らを指導していいのか?悩み抜いたときに脳裏に浮かんだのが、学生時代に打ち込んだチアリーディングだったのだ。
しかし、本場で感じたのは若いチームメートとのレベルの差だった。体力、体格、ダンスの実力、すべてに劣っていると痛感した美奈子さん。それを補おうと自費で行うトレーニングは1回5時間にも及ぶ。ケガをすればすぐにポジションを奪われる厳しい競争の世界だが、美奈子さんは「私にしかない何かがあると信じてやっています。常に心がけているのは笑顔で前向きな気持ちでいること。それが私のストロングポイントです」と語る。
夢を追いかけたことがない自分の人生にふと疑問を抱いたことから始まった大きな挑戦。「今は夢を追う過程にいるということが何よりの喜び」という美奈子さんに、日本の両親から届けられたのは母手作りのエプロン。そこには“FIGHT(ファイト)”の文字がひと針ひと針縫いつけられていた。美奈子さんは「背中を押してくれる言葉ですよね。最高にうれしい」と顔をほころばせる。添えられていた手紙には「強い気持ちでアメリカに渡ったので、多少のことにはくじけないと思っていますが、心配は尽きません。そちらでの仕事が終わったら早く日本に帰って来てください」と、母の切ない思いが込められていた。美奈子さんは「こちらで貴重な経験をさせてもらっている。日本に帰ったら両親にもお返しができるよう、こちらでできるだけ頑張りたい」と、いずれ日本に帰ることを約束して両親を安心させるのだった。