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#3611月17日(日)10:25~放送
オーストラリア・キャンベラ

 今回の配達先はオーストラリアの首都キャンベラ。この街で新進気鋭のガラスアーティストとして奮闘する竹村雄介さん(32)と、兵庫県に住む父・説夫さん(59)、母・加代子さん(59)をつなぐ。9年前にオーストラリアに渡り、大都市シドニーでアーティストとしてキャリアを積んできた雄介さんは、1か月前、突如としてその生活を捨て、キャンベラに移り住んだという。両親は「事情を一切言ってくれない。何かリセットしたかったことがあったのか…。大丈夫なのだろうか」と心配している。
 雄介さんが活動するのは、政府支援によりガラスアーティストの育成を目的とした施設で、優秀なアーティストも集まる工房「キャンベラ・ガラスワークス」。彼の作品は、最初に吹きガラスを作り、それをさらに特殊な工具を使って彫刻のように削り出すという独自の方法で作られる。「誰も作ったことのないものを作りたい」との思いから生み出される、とても繊細な作品だ。
 元々飽き性たった雄介さんは、子供のころから何をやっても長続きしなかったという。そんな彼を変えたのは、高校2年生の時に父と2人で行ったイタリア旅行だった。「ヴェネツィアングラスを制作している様子を見た時の印象が強烈で、“これがやりたい!”と。初めて中途半端で終わらずに済むようなものが見つかったと思った」と振り返る。大学ではガラスアートを学び、卒業後すぐに“世界で勝負したい”とオーストラリアへ。何のツテもなく途方に暮れていた彼を、ガラス工房のアシスタントとして雇ってくれたのが、今も公私ともに大きな信頼を寄せる友人のマットさんだった。
 アーティストとしてこれまでに制作した作品はおよそ40点。そのうち30点ほどが売れたというが、材料費などを考えると、生活はギリギリだという。まだまだガラスアート一本で生活できない雄介さんは、現在マットさんの家に間借りし、彼が経営するガラスパネルの会社でも働いている。しかし、そんな苦労を両親には一切明かしたことはないという。
 1カ月前まで、大都会シドニーでアーティストとして走り続けてきた雄介さん。仕事は着実に増えていたが、一方である思いが募っていたという。「エンジンはすごく動いているのに、ギアがちゃんとかみ合っていないような感じだった。休みなく働いても、結果を見ると“何をしていたんだろう”ということが何年も続いた」。心機一転、環境を変えることで、見えなかったことが見えてくるのではないかと考え、キャンベラへ移り住んだのだという。
 新天地で新たな一歩を踏み出した雄介さん。最近では香港のギャラリーから“作品を展示したい”とアプローチがあったという。「これからも、そういうマーケットに作品を持って行けることを目指したい。そして、ゆくゆくは自分のスタジオを構えて、制作に集中できるような環境づくりをし、新しいことに挑戦したい」と夢を語る。
 そんな雄介さんに日本の両親から届けられたのは手作りのアルバム。家族や親せきから写真やメッセージを集めて回り、取りまとめたもので、そこには雄介さんを応援する言葉があふれていた。雄介さんは一つ一つに目を通すと「すごいですね」と感激の涙。父からは「もし作品の買い手がなければ、買い取りたいと思っているので、その時はお知らせを」とメッセージが綴られていた。雄介さんは父の心遣いに感謝し、「今まで応援してくれた感謝の気持ちで、家族には何か作品を贈りたいと思っている。僕はのうのうと生きているので(笑)心配しなくて大丈夫」と両親に語りかけるのだった。