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#35912月27日(日)10:25~放送
カンボジア・プノンペン

今回の配達先はカンボジアの首都プノンペン。ここで何の経験もツテもなく、オーダーメードシャツのブランドを立ち上げた浅野佑介さん(34)と、愛知県に住む父・賢さん(64)と母・瑞枝さん(61)をつなぐ。かつて病のため生死をさまよった佑介さんは“本当に自分らしい人生を全うしたい”と、大好きな国・カンボジアへ。両親は「会社は上手くいっているのか」と心配しながらも、「自分のやりたいことをやって生きていってくれれば」と日本から見守っている。
 佑介さんのブランド「Sui-Joh(スイジョウ)」は、今年2月に初めてのショップをオープンした。ブランドの顔といえるのが、フルオーダーメードで仕立てる個性的なシャツ。袖口や襟裏にカラフルなカンボジアの伝統生地“クロマー”を使っているのがこだわりだ。体の寸法を測って、100種類以上の中から好みの生地を選び、細部のデザインを打ち合わせると、店にいる2人の仕立て係が1枚1枚縫い上げていく。1枚29ドル(約3500円)からと、カンボジア人にとっては高価だが、駐在員や現地に住む日本人、観光でやってきた欧米人に人気があるという。
日本では普通のサラリーマンだった佑介さん。26歳の時、突如、脳内出血を起こし、脳に先天的な異常が見つかった。初めて死というものに直面し、病床でこれからの人生を考え直したという。「このまま仕事に復帰しても、10年後、20年後に“自分が自分として生きた”とちゃんと言えるのか?」。本当に自分らしい人生を全うしたいと思った時、頭に浮かんだのが、学生時代に訪れて大好きになったカンボジアだった。アパレル業界の知識もツテもなく、経営に関してもまったく素人だったが、日本人のセンスと、カンボジア人の仕立ての技術を掛け合わせれば、何か新しい価値が生まれるのではないかと考え、5年前にカンボジアへ。猛勉強の末、サラリーマン時代の貯金を元手に、店をオープンさせたのだ。
「カンボジアの人は自国製品を低クォリティと考えている人が多い。もっと自国にプライドを持ってほしい。メイド・イン・カンボジアでもハイクォリティはあるんだということを発信したい」と佑介さん。しかし、1つ1つ手作業で作るゆえのミスやトラブルも少なくなく、まだまだ儲けが出るまでには至らないという。
 4人兄弟の長男として生まれた佑介さん。父は元々、アルミ製品の輸出販売をする会社を営んでおり、小さいころから“ゆくゆくは会社の社長に”と大切に育てられた。しかし20歳の時、アメリカ同時多発テロの影響を受け、会社が倒産。家業を継ぐ道を断たれた佑介さんは日本を飛び出し、バッグパッカーとして何カ国も旅をした。そんな中、初めて訪れたカンボジアである家族と親しくなり、この国が大好きになったという。「父を慕っていた人が、会社が倒産した途端、手のひらを返すなど、人間の裏の面を間近で見て、疲れてしまっていた。だから、この国の人々の純粋な笑顔に惹かれたんです」と佑介さんは振り返る。
んな大好きなカンボジアで、現在は婚約者の名津子さん(25)と暮らしながら、ビジネスに奮闘する佑介さん。日本の両親から届けられたのは、ダルマをかたどった夫婦茶碗。添えられた手紙には「私たちも本当にいろいろあった人生でした」と、苦楽を分かち合える家族がいることへの感謝と共に、「名津子さんを大切にしてください」と綴られていた。涙する佑介さんは、その言葉を胸に刻み、名津子さんに誓うのだった。