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#35612月6日(日)10:25~放送
スペイン・カタルーニャ

 今回のお届け先はバスケット強豪国のスペイン・カタルーニャ州ベンドレイ。5部リーグのチーム「エルベンドレイ」に所属するプロバスケットボール選手の木下勲さん(21)と、かつて彼をバスケット部に誘ってくれた高校の顧問で恩師の柴山佳久さん(61)をつなぐ。柴山さんは「彼は我の強い子で、誰にもボールを渡さず、全部一人でシュートを決めようとしていた」と、そのプレースタイルを振り返り、「今はどんなプレーをしているのか」と、気がかりな様子だ。
 身長175cmと小柄ながら、抜群の身体能力を武器に、チームの司令塔ともいえるポジション“ポイントガード”として活躍する勲さん。チームのレベルは日本のトップリーグの選手たちと変わらないというが、給料は安定せず、プロとしてプレーするには厳しい環境にある。
 高校卒業後は、大学進学と同時に日本のプロチームに入団。日本初の学生プロ選手として注目されていたが、ある事情から、たった1年で退団することに…。「当時は1人でドリブルしてシュートをしていた。自分のスキルを見せつけたかった。周りからどう言われようが関係ないという考えだった」と勲さん。チームの方針に従わず、傍若無人にプレーをする彼に、試合出場の機会は次第に与えられなくなっていったのだ。
 フラストレーションがたまる中、勲さんは世界最高峰のNBAを目指してアメリカへ。「自分の性格はアメリカに合うと思った」。しかし、乗り込んでみると、現実はまったく違っていたという。「井の中の蛙だった。完璧に負かされた。自分のやり方じゃ絶対に勝てないと思い知らされた」。人生初の挫折だった。個人のパフォーマンスで勝負するアメリカのバスケットでは歯が立たないと悟った彼は、今年8月、組織的なチームプレーで勝負するスペインへと渡ったのだ。
 スペインには「ユーロプロバスケットアカデミー」という欧州独自のシステムがある。ヨーロッパでのプレーを望む世界中の選手をバックアップする組織で、そこには絶えずプロチームのスカウトが訪れ、選手はここでプレーをしながら所属チームを探す。勲さんもここで現在のチームからオファーを受けたのだ。
かつては、大きな選手に当たり負けしないようにと、ウェイトトレーニングで筋肉をつけていたが、スペインに来てからは、バランスとスピードを重視した体幹トレーニングに練習方法を一新。チームの司令塔として、試合中の視野を広げるための練習法も取り入れるようになった。食事も自炊で徹底的に管理し、酒、タバコ、菓子類は一切口にしない。「体の隅々まで神経を集中させ、小さい身体を常に100%、最大限に使い切れるようにしておかなければ、大きな選手とは戦えない」という。
 「以前は自分のポジションを、一番ボールを持って、一番得点に絡めるとしか考えていなかった。でも今、僕の役目はチームを勝たせること。自分の得点が少なくても、チームが勝てば、僕がゲームをコントロールして勝ったことになる」という勲さん。そこにはもう、傍若無人なプレーをするかつての彼の姿はなかった。
小さい体ゆえの反骨心を糧に、そのバスケット人生を戦い続けてきた勲さん。そんな彼を支え続けてくれているのは、恩師とバスケットに明け暮れた3年間だという。「“お前の思うようにやれ”という先生の言葉が一番好きだった。僕のことを本当に信頼してくれ、バスケットのことを好きにさせてくれた」と勲さんは感謝する。
 そんな勲さんに届けられたのは、恩師が選んだバスケットシューズ。左足には“God Bless You(神のご加護を)”、左足には“Rule the Game”と綴られていた。勲さんは「“ゲームを支配しろ”ということですね。僕はすぐにカッとなるところがあるので、この言葉を見て心を落ち着かせたい」と、恩師の言葉を噛みしめるのだった。