今回の配達先はアメリカ・ニューヨーク。世界のファッショントレンドをリードするこの街で、ネイリストとして活躍する安田直美さん(30)と、岐阜県に住む父・晴男さん(60)、母・明美さん(54)、妹・裕美さん(28)、真弓美さん(26)をつなぐ。広告や雑誌、ファッションショーなどのネイルアートをメインに活動する直美さんは、レディー・ガガをはじめ多くのスーパーセレブにも施術した経験を持つトップクラスのネイリストだ。両親は「私たちに似た性格だったらNYで暮らせる度胸はないはず。度胸があったおばあちゃん、責任感が強かったおじいちゃんに似たのだと思う」と話す。
美容専門学校を卒業後、名古屋の小さなネイルサロンで働いていた直美さんは、子供の頃から憧れていたアメリカでライセンスを取得するため、7年前にNYへ。英語もほとんど話せない中、ネイルサロンで働き始めた。しかし現実は期待していたものとは違っていたという。「当時はまだ日本みたいなネイルアートが普及していなかった。日本のネイリストはアートができないとダメだが、まだアメリカでは(ただ色を塗るだけの)マニキュアリストがほとんどだった」という。彼女のように立体的なデザインができるネイリストは珍しがられたそうで「逆にチャンスだと思った」と直美さんは振り返る。
しかし、技術は持っていても全くの無名。英語も話せず、何のツテもなかった。そんな中、仕事を通じて出会ったのがNYでも屈指のメイクアップアーティストのアシュンタさんだった。「直美はほかの人にはできない3Dアートをやっていた。それを見て大きなトレンドになると思った」。直美さんのネイルに衝撃を受けたアシュンタさんはその技術力を見込み、世界的歌手アリシア・キーズのネイリストとして推薦してくれたのだ。彼女の個性的なネイルは評判となり、次々とスーパーセレブからオファーが舞い込むように。直美さんは「私がやっていいのかな?と思いながらやっていました。でもお客さんがスゴイのであって、自分がスゴイわけでもなんでもない。自分の代わりになる子はたくさんいる。その中で私を選んでもらえるのはすごくありがたい」と謙虚だ。
サンプルを見てネイルアートをオーダーすることが多い日本と違い、アメリカではその場で作り上げる発想力が求められるという。お客の持つイメージを瞬時に汲み取れるかが、ネイリストとしての腕の見せ所でもあるのだ。彼女をそんなトップクラスのネイリストにまで押し上げたのは、確かな技術と、セレブ相手にも物怖じしない祖父母譲りの性格だった…。
NYに渡って7年。持ち前の度胸を武器に、し烈な競争を勝ち抜いてきた直美さん。そんな彼女に日本の家族から届けられたのは、亡き祖母が好きだった押し花をあしらった母手作りの家族写真。そこには1通の手紙が添えられていた。それは直美さんがアメリカに渡って1年ほどした頃、祖母が送ったものの、あて先不明で戻ってきたものだった。そこには直美さんが旅立った寂しさや、心配する思いであふれていた。届くことのなかった手紙を手に、直美さんは「私がアメリカで活躍しているのを喜んでくれていたので、今も天国で見守ってくれていると思う。その期待を裏切らないように頑張りたい」と、亡き祖父母に誓うのだった。