今回の配達先はスウェーデンの首都ストックホルム。北欧で人気のスポーツ「フロアボール」を極めるために奮闘する高橋由衣さん(25)と、神奈川県に住む父・実さん(55)、母・あつ子さん(55)、妹・満香さん(18)をつなぐ。母曰く「人の3倍生きている」という由衣さん。妹も同じくフロアボール選手で、「姉と一緒に日本代表チームで試合に出たこともある」という。一方、父は「娘は体が小さいので、向こうの人たちと一緒にちゃんとプレーができているのか」と心配している。
由衣さんが所属するチームは「ハンマビー」。スウェーデンに5つあるフロアボールリーグのうち、上から2番目のリーグに所属する強豪チームだ。フィールドホッケーの室内版ともいえるフロアボールは、日本ではマイナーなスポーツだが、北欧の各国では盛ん。特に発祥の国であるスウェーデンはレベルが高く、世界最強といわれている。
フロアボールはキーパーを含めた1チーム6人で戦う競技。ベンチ入りできるのは最大20人で、由衣さんもその1人。しかし6月にこのチームに移籍して以来、まだ一度も試合に出してもらっていない。その悔しさから思わず涙してしまうことも。その理由は言葉の壁。めまぐるしく変わる戦術に、まだ臨機応変に対応できないのだ。
6歳の時に学童保育でフロアボールと出会い、以来クラブチームでプレーを続け、日本代表のエースにまで上り詰めた由衣さん。「この競技を始めた時、教えてくれた人が『あなたが大きくなるころまでにはオリンピックの種目になっているスポーツだから、頑張って練習を続けて、日本代表になりなさい』と言ってくれた。その言葉を信じてずっと練習をしてきた」という。
フロアボールはアマチュア競技のため、由衣さんは日本食レストランで働いて収入を得ている。また、スウェーデンの子供たちに日本語や勉強も教えているが、これもフロアボールのためだ。「将来、私が誰かのために就労ビザを取ってあげることができたら」という由衣さん。日本の若い選手に本場スウェーデンに来て経験を積んでほしい。その窓口になれればと考えているのだ。
由衣さんたち選手は皆、仕事を持っていたり、学校に通っており、練習は夜行われる。由衣さんの武器は相手の裏を突く瞬発力と、豊富な運動量。言葉の壁と身長差というハンデをカバーするため、誰より練習に熱が入る。練習後も1人走り込む彼女の姿が…。「今のチームメートに勝っていかないと、試合に出ることができない。彼女たちより練習をしないと…」。そんな努力が実を結び、今季リーグ3戦目では、ついに試合に初出場を果たし、大きな一歩を歩み出した。
スウェーデンに来て3年。思い出すのはやはり家族の事だという。日本では、試合の前には父が握ってくれた大きなおにぎりを食べて気合を入れたという由衣さん。「私と妹はファザコン。父は素敵すぎます。世界一のお父さんです」と胸を張る。
そんな父から届けられたのは手作りのシチュー。誕生日やクリスマスの時、いつも父が手間暇かけて作ってくれたという。由衣さんは「もう何年も食べてなかったのでうれしい。これを食べて頑張れそうです」と、大きな力をもらうのだった。