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#30610月19日(日)10:25~放送
カンボジア・シェムリアップ

 世界遺産・アンコール遺跡群でも知られるカンボジアのシェムリアップ。カンボジア初の飴細工店をオープンさせるために去年、この地にやってきた飴細工職人の関屋やよいさん(41)と、大阪・岸和田市に住む父・常信さん(70)と姉・弘子さん(45)をつなぐ。遠く離れてしまった娘に、父は「本当は近くにいてほしい。親としては寂しい」と話す。
 やよいさんが働く店は、アンコールワットに続く街道沿いにある「キャンディー・アンコール」。去年12月にこの店の日本人オーナーの誘いでカンボジアへ渡り、3か月間の準備期間を経て、今年の4月にオープンした。やよいさんのほかに現地スタッフが3人。飴はすべて手作りで、実演販売を行っている。やよいさんが手掛けるのは日本の昔ながらの飴細工で、熱して柔らかくした飴を丸め、手と握りばさみだけで、みるみる動物などの立体的な形を作り上げていく。
 一方、お店で一番売れている商品は「組み飴」。棒状の飴を切ると断面に同じ図柄が出てくる、いわゆる金太郎飴だ。パイナップル柄やレモン柄など、お店で売っているのはおよそ30種類。世界各地で見られる組み飴だが、ここカンボジアにはなかったという。飴づくりを見たこともない現地の若いスタッフを、やよいさんが一から指導し、今では簡単な絵柄は任せられるまでに成長した。
 旅先で出会った飴細工に魅了され、35歳の時、仕事を辞めて飴細工職人に弟子入りしたやよいさん。5年間、日本で職人として活動したのち、40歳でカンボジアにやって来たのだ。 実はやよいさん、33歳で母を亡くし、日本では父と2人で暮らしだった。あまりにもあっけなく逝ってしまった母。「それをきっかけに、自分の人生をもうちょっと大事にしようと考えるようになった。自分がやりたいことを探っていこうと…」。父を1人日本に残して旅立つのは心苦しかったというが、それでも彼女はカンボジアに渡った。
 休みの日にはオーナーの西えり子さんと2人で貧しい村を回り、日本から送られてきた古着を配る活動をしているやよいさん。西さんは「飴細工職人を探すとき、一番は技術じゃなかった。カンボジアの職人を育ててもらいたかった。やよいさんならカンボジア人の良さを伸ばしてあげながら育てて行けると思った」と、彼女を呼び寄せた理由を語る。やよいさんの元で働く3人の現地スタッフも、カンボジアの貧しい村の出身だ。今では3人とも手に職をつけ、「将来は自分の店を持ちたい」と夢を持つまでになった。
 カンボジアに渡るときは、いつか自分の店を持つときのための勉強だと考えていたというやよいさん。だが「カンボジアで仕事を始めてみると、やりがいがあるし、もっと自分に何かできることがあるような気がしてきた。日本にいつか帰るのかは、わからない」と、目指すものが変わってきたことを明かす。
 そんなやよいさんに、日本の父から届けられたのはお雑煮。今年の正月、日本に帰れなかったやよいさんのために、父が腕によりをかけて作ってくれたのだ。やよいさんは「やっとお正月が来ました。おいしい」としみじみ涙。「来年には一度家に帰りたい。いつもありがとう」と、心配する家族に感謝の言葉を語るのだった。