今回の配達先はアメリカ・ニューヨーク。京都大学大学院を卒業し、一度は教師の道へ進んだものの、1年で退職し、女優になる夢を追ってこの街にやってきた筒井あづみさん(29)と、大阪に住む父・宏さん(62)、母・陽子さん(60)をつなぐ。両親には女優の夢など一切伝えず日本を飛び出したあづみさん。両親は「女優をしているというのは最近初めて知った。聞いても詳しいことは何も教えてくれなくて…」と心配している。
現在は主にインディーズ映画の撮影に参加しているあづみさん。NYの演劇学校で2年間演技を学び、本格的に女優を始めて2年。何のツテもなかった彼女だが、これまで出演した作品は、インディーズ映画を始めテレビ、CM、ウェブ・ムービーなどおよそ30本に上る。昨年はある長編映画の主役に抜擢されてアクションにも挑戦した。こういったインディーズ映画はDVD販売などで世に出て高く評価されれば、メジャーへの足掛かりになるのだという。
昨年はオーディションに合格し、NYで撮影された日本のCMにも出演した。しかし、そのことを両親には報告しなかったという。「両親とはそういう話をするような関係じゃないんです。きっかけは反抗期。それが今も続いているのかも」とあづみさんは複雑な思いを明かす。
小さいころからアメリカで女優になることに漠然と憧れを持っていたが、それは“現実離れした夢だ”と、周囲の誰にも明かさなかった。そのまま大学院を卒業し、英語教師として就職したが、わずか1年で退職。「改めて自分は女優をやりたいと思っていることに気付いた。この道を追いかけずには死ねないと思った」とあづみさんはいう。
常にインターネットなどでオーディション募集を探し、1週間に20~30も応募する。「誰かが言ってくれるのを待っているのではなく、ここでは自分から(チャンスを掴みに)行けるところがいい」とあづみさん。自分が出演した作品を編集してデモビデオを作成し、自ら精力的に売り込みも行う。夢を追いかけ、撮影とオーディションの多忙な日々を送っているが、まだまだ経済的には厳しい状況だ。「今はギャラにこだわらず何でもやっている。すべてが経験だから。自分に自信が持てる時もあるけど、自信を無くすこともある。どこまでいけるかは別として、これが私のやっていきたい事だから、諦めるという考えもない。中途半端な状態で日本に帰っても仕事はないと思う。日本でも認められるくらいになるまで、日本には帰らない」と覚悟を決めている。
NYで奮闘するあづみさんの逞しい姿に、両親は「そこまで気持ちが強いことがよく分かった」と納得した様子。そんな両親から届けられたのは「交換日記」と書かれたノート。最初のページには母からのメッセージで「本当にやりたい事に挑戦しているのであれば、心から応援するつもりです。せめてちょっとずつでもいいから、あづみ自身の言葉で近況を伝えてほしい。時には弱音もお母さんに聞かせてください」と、このノートを贈った思いが綴られていた。あづみさんは涙で「母がこういう風に思っているだろうとは思っていた。泣きながら書いたのでは」と心配し、「ちょっとずつ、徐々に心を開いていけるように頑張ります」と語るのだった。