今回の配達先はニュージーランドのオークランド。移動式のファストフード店を営む大嶋元さん(40)と、兵庫県・高砂市に住む父・武志さん(66)、母・陽子さん(66)をつなぐ。かつては有名店の料理人だったが、リストラされ心機一転、1年前、40歳にしてトレーラーを改造した移動式店舗での商売という新たな挑戦を始めた。両親は「小さい時から奥手だった。人生も奥手で、これからよくなってくれれば」と願っている。
奥さんの恵さん(36)と2人、車で店舗をけん引し、週4回、オークランドのマーケットで店を開いている元さん。メニューは巻きずしやハンバーガーなど、ファストフードが20種類。すべてトレーラーを改造した厨房で作っている。お客さんがひっきりなしにやってくるため、調理をしながらの接客だ。2人とも作務衣を着用した個性的なスタイルで、「日本をアピールしながらやってます」。設備が限られた移動式店舗だが、「お客さんとの距離が近い。言葉を交わしたり、コミュニケーションが楽しい」と、元さんは不便を上回る魅力を語る。
22歳の時にオーストラリアでダイビングと出会い、その後、インストラクターとして各国を渡り歩いた。10年前、当時結婚していた女性とニュージーランドに渡り、有名レストランに就職。順風満帆の海外生活が始まった。しかし移住から4年目に離婚。追い打ちをかけるように、レストランが規模を縮小してリストラに。「へこみました。そのとき支えてくれたのが今の妻でした」と元さん。同僚だった恵さんもレストランを辞め、1年前、貯金をはたいて2人でこの店を始めたのだ。「最初は見向きもされない日もあったけど、毎週来てくれる人も増えてきた」と、恵さんは手応えを感じているようだ。
40歳にしてようやく再スタートを切った元さん。1年が過ぎ、常連さんも増えて商売が軌道に乗り始めた今、新たな夢があるという。「最終的には妻と2人で小さな小料理屋をやりたい。自分たちの基盤を作って、少しずつステップアップしたい」。そして、両親に対しては「自分で商売をやると言い出して、すごく心配をかけていると思う。早く落ち着いて生活できるようになって、いつかはこっちに招待してあげられたら」と思いを語る。
そんな両親から届けられたのは、母手作りのバンダナと鉢巻。そこには“心”という文字が刺繍され、離婚・リストラを乗り越え、人生の再スタートを切った息子を応援する思いが込められていた。添えられていた母の手紙には「何事も感謝の気持ちを持って、2人でこれからの人生を歩んでいってください。人生はこれからです。」と綴られていた。そんな母の思いに、元さんは「一生懸命心を込めて料理を作って提供していきたい」と気持ちも新たに誓うのだった。