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#26712月15日(日)10:25~放送
アメリカ/カリフォルニア

 今回の配達先はアメリカ・ロサンゼルス。カリフォルニア州立大学フラートン校で舞台美術を専攻し、舞台のセットデザイナーを目指して奮闘する鈴木由衣さん(20)と、東京に住む父・紳一郎さん(60)、母・由佳さん(49)をつなぐ。両親は「一人娘なので心配だったが、甘やかせて育てたから、早く独り立ちさせたいという気持ちはあった」と、娘をアメリカに送り出した時の心境を振り返る。

 カリフォルニア州立大学フラートン校は、東京ドーム20個分の敷地に8つの学部、107の学科を有し、およそ4万人の学生が在籍する。舞台芸術を専門に学ぶコースがあり、ハリウッドやブロードウェイなどに多くのプロを排出してきた名門校だ。由衣さんが在籍する学部には、俳優やダンサーを育成する舞台芸術学科と、照明や大道具、メイクなどを学ぶ舞台美術学科があり、由衣さんはその舞台美術学科で学んでいる。

 学内には3つの劇場があり、毎年春と秋に学生たちによって行われる公演が今年も2日後に迫る。プロのスカウトマンも注目し、この公演がきっかけでブロードウェイ・デビューを果たす卒業生も多いという。今回、小道具のチーフとメイクのコンセプトを任された由衣さんは、ハードな授業や毎日の課題に加え、公演の準備に大忙しだ。その上、昨年の成績がずば抜けて優秀だったため、今年は教授のアシスタントも任され、寝る間もないほど多忙を極める。

 この大学の教壇に立つのは、ブロードウェイやシルク・ドゥ・ソレイユなど、世界的に知られる舞台で活躍してきた有名人ばかり。いい成績を残して、教授の推薦を勝ち取れば、プロの世界への大きな足掛かりとなるだけに、毎日がオーディションのようなものだという。

 3歳の時、両親に連れられて初めて見て以来、舞台に夢中になった由衣さん。中学の時に見たミュージカル「エリザベート」に衝撃を受け、舞台美術の仕事に就くことを心に決めた。目指すのは、舞台セットだけでなく小道具、照明、メイクに至るまで、舞台上にあるすべての要素を把握し、空間全体をデザインするセットデザイナー。しかし、まだまだ自分の腕に納得はできていないという。「クラスメートはみんなライバル。もっとストイックになりたい。舞台に立つ俳優は、幼いころから厳しいトレーニングを積んでブロードウェイを目指す。それだけ努力をしてきた人たちが立つ舞台を作るのだから、裏方としても相当ストイックでなければ。自分に厳しくないと彼らに申し訳ない」と由衣さんはいう。

 公演の初日は大盛況のうちに幕を閉じ、ホッとした様子の由衣さん。「最終目標はブロードウェイ。いつか自分がデザインした舞台を両親に見せたい」。そう夢を語る由衣さんに、日本の両親から届けられたのは、彼女がずっとほしがっていたメイクのための化粧筆のセット。熟練の職人が手作りしたプロも愛用する逸品だ。由衣さんは「これで世界を目指せということですね。ずっと支えてくれた両親には、感謝してもしきれない」と思いを語るのだった。