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#26612月8日(日)10:25~放送
ベトナム/ホーチミン

今回のお届け先は、今まさにバブル景気真っ只中にあるベトナム・ホーチミン。お金と時間に余裕が出始めたこの国の人々に向けて、クッキングスクールを立ち上げた荒島由也さん(30)と、東京に住む父・由明さん(53)をつなぐ。同じく20代で起業した経営者の父は「息子は昔から仕切るタイプだったので、経営者には向いてるのじゃないか。起業は事後報告だったが、やってみれば?という感じだった。僕も自分の好きなことをやってきたからね」と、息子の挑戦を見守っている。

 由也さんが経営する「スターキッチン」は今年7月にオープンしたばかり。無添加にこだわった洋菓子ら和菓子まで、さまざまなスイーツを学ぶことができる。このような洗練された空間で、趣味として楽しめる料理教室はこれまでベトナムになかったという。由也さんは「僕が調べた中で、ベトナムが一番活気があった。経済発展していく中で、お金も時間も余っている人が出てきている。でも、そんな人たちが楽しめるエンターテイメントがあまりない。そこでクッキングスクールをやれば面白いんじゃないかと」。激動の国でチャンスを掴もうと体一つで飛び込んだ理由をそう明かす。

 生徒の9割は若いベトナム人女性。平均月収が10万円ほどのベトナムで、授業料が1レッスン2000円というのは決して安くはないが、流行に敏感な女性たちに受け、すでに月200人を超える生徒が通っている。和菓子の授業は日本から材料を取り寄せ、由也さん自らが担当する。「料理教室だが日本の文化も伝えていきたい。生徒たちもそういうことを求めている」と由也さんはいう。元コンサルタントらしい丁寧でわかりやすい説明も、この教室が人気を集める理由の一つなのだ。

 10歳の時に両親が離婚し、男手ひとつで育てられた由也さん。大学卒業後は大手コンサルティング会社に就職したが、「自分の腕だけで稼いでみたい」と5年で退社。かねてより勝算があると踏んでいたベトナムで、事業に乗り出したのだ。スイーツ作りはまったくの素人だったが、料理研究家の元で修業をし、起業資金500万円を携えて、昨年10月ベトナムへ。オープンから3か月で早くも収支は黒字だという。由也さんはクッキングスクールの運営だけにとどまらず、ケーキの販売も行い、さらなる事業の拡大を目指している。

 現地スタッフ5人を抱える新米経営者として奮闘する由也さんだが、文化の違いから、スタッフには日本では当たり前のことまで細かく教育しなければならず、ベトナムならではのトラブルも日常茶飯事だという。そんな緊張と充実の毎日を送る中で、由也さんは父の大きさをより感じるようになったという。「トラブルは大小あるが、動揺して余裕がなくなることもある。でも父は大きなトラブルにも動じなかった。すごいと思う。負けたくない」。由也さんにとって父は大きな目標でもあるのだ。

 そんな由也さんに父から届けられたのは腕時計。父がいつも身に着けていた愛用の品だ。これまで放任主義を貫いてきた父だが、添えられていた手紙には、「私が会社を始めて軌道に乗ったころに買った時計を贈ります。経営が良い時も悪い時もずっとしていた時計です。由也もこれを身に着けて自分の夢を実現してください」と、これまで語ったことのない思いが綴られていた。由也さんは「初めて父とちゃんと会話した気がします。恥ずかしさもありますが、“頑張れよ”といってもらえて嬉しいですね。でも父を超えたい。その方が父も喜ぶと思う」と語るのだった。